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  1. 計画的に築かれた都市でなければ、たいていの路地は曲がりくねっているものだ。

    この都市は、特にそれが顕著だ。主要な大通りこそ明確な直線によって成り立っているものの、そこを外れて細い路地に入ると、たちまちぐねぐねと激しい湾曲が始まる。

    赤々と燃えていた太陽は墜ちきり、炭のような薄闇が都市を溶かしている。表通りは最新式のガス灯で照らされているが、こうした路地は昔ながらの不気味な暗さをたたえたままだ。

    そんな、ごろつきや賊の類が好んで潜むような場所を、リフィルたちは堂々と進んでいく。

    ガラの悪い連中は頻繁に見かけるが、すれ違ったり、遠巻きに見つめられたりする程度で、話しかけてくる者はない。なかには気味悪げに身を引く者さえいる。〈メアレス〉に好んで喧嘩を売ろうなどという愚か者は、この都市にはまずいない。

    構わず進んでいると、

  2. アフリト

    まるで、森の奥から狼の群れが出てきたようだ。

  3. 可笑しげな笑い声が、脇から響いた。

    誰もいなかったはずの空間――路地の壁際に、異郷の装いをした男が座り込み、長い煙管キセルを振っている。

  4. アフリト

    森の浅きを我が物顔で闊歩していた獣たちが、本物の猛獣の出現に怯え、息を潜めている。本能的な防衛行動だ。

  5. リフィル

    アフリトおう

  6. リフィルは、じろりと男を見下ろした。

  7. リフィル

    話がある。

  8. アフリト

    〈メアレス〉を集めたいのだろう。構わんがね……問題は報酬の分配だ。あの〈ロストメア〉が持つ魔力はなかなかのものだが、山分けにしてしまえば、したもんさ。果たしてみなが乗ってくるかね?

  9. リフィル

    分配はしない。とどめを刺した者が総取りする。

  10. アフリト

    ほう。だが、それだと、とどめを刺せねば骨折り損……ということになるなぁ。

  11. リフィル

    とどめを刺す自信のない者など、はなからあてにはしていない。

  12. アフリト

    はっは! だそうだが・・・・・、どうするね?

  13. ゼラード

    いいんじゃねえか。

  14. 路地の奥から誰かが進み出てきた。

    がっしりとした体躯を誇る壮年の男だ。生きることに疲れきったような、どこか自堕落な風情を漂わせている。口調も投げやりな印象が強い。

  15. ゼラード

    首を獲ったもん勝ち、ってことだろ。なら、普段と変わらん。よーいどん、で一斉にスタートするって違いがあるだけでな。

  16. コピシュ

    でも、タダ働きってことになると、やっぱりめげるとこあると思います。

  17. 男の後ろから、ひょこ、と幼い少女が顔を出す。まだ十かそこらというところ――背丈も男の腰くらいまでしかない。

  18. コピシュ

    今回報酬を得られなかった人は、総取りした人にひとつ〝貸し〟を作れるってことで、どうでしょう?

  19. にっこり告げる彼女の背中で、がしゃりと重々しい音が響いた。剣である。それも一本や二本ではない。大小さまざまな種類の剣を、十数と背負っている。

  20. ラギト

    〈徹剣〉エッジワースゼラードには一杯奢ればすむ話だが、〈剣庫〉アーセナルコピシュへの〝貸し〟は高くつきそうだ

  21. 路地の反対側から少年が現れ、鷹揚な笑みを浮かべて言った。

    端正に整った貴族的容貌に、仕立てのいい服がよく似合っている。若くして才気走る、都市の名士の一人息子――という風情だが、それにしては凄味がにじみすぎていた。名士の皮をかぶったならず者どもの長ギャングリーダーと言われれば、腑に落ちもする。

  22. ラギト

    とはいえ、人擬態級ミミッキングが相手なら、そのくらいは許容範囲だ。俺は構わない。

  23. ルリアゲハ

    あなたに作る〝貸し〟がいちばん怖いけどね。〈夢魔装〉ダイトメアラギト。

  24. ラギト

    俺がするのはいつだって人間らしいお願いに限るさ、〈墜ち星〉ガンダウナー

  25. どうだか、とばかりルリアゲハは肩をすくめた。

  26. アフリト

    さておき、役者は揃った。

  27. 軽く煙を吐きながら、アフリトが言った。

  28. アフリト

    手負いの夢魔の居所は、わしが探して伝えよう。武運を祈っとるよ。おまえさんたちが人をあやめぬ限りは。

  29. ミリィ

    耳タコっすよー、アフリト翁。心配しなくたって、ちゃんとやりますって。あたしたちの敵は、〈ロストメア〉だけなんすから。

  30. アフリト

    そう願う。

  31. アフリトは、影めいた微笑みを浮かべた。

  32. アフリト

    夢見る者に、夢は潰せぬ。夢見ざる者だけが、見果てぬ夢をも折り砕く牙となる。儚い夢の化身どもに、現実の重さを教えてやるがいい――夢捨て人メアレスたちよ。

黄昏メアレス プレストーリー

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