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  1. 大きく開いた口に銃弾を叩き込まれた〈ロストメア〉は、ぎゃあっと叫んで後ずさる。

  2. ルリアゲハ

    またでたらめな奴が出たものね!

  3. 追いついてきたルリアゲハが、リフィルの隣に並んだ。白い手に拳銃を携え、ぴしりと〈ロストメア〉に狙いを定めている。

  4. リフィル

    見えた。

  5. 礼を言うでもなく、ぽつりとリフィル。

  6. ルリアゲハ

    何が見えたの!?

  7. さらに銃弾を放ちながら、ルリアゲハ。

  8. リフィル

    〝逃げたい。もう誰にも縛られたくない。永遠に自由の身となって生きていきたい〟。そういう〈夢〉。

  9. ルリアゲハ

    奴隷か何かの見そうな〈夢〉ね! で、それが!?

  10. リフィル

    どんな束縛も奴には効かない。

  11. リフィルは糸を操りながら背後を振り向いた。
    銃火の嵐に足止めされていたはずの怪物が、目の前で・・・・ぎょっと立ちすくむ。

  12. リフィル

    (侮辱だ。同じ手に引っかかる馬鹿と思われたとは!)

  13. 間合いは、たった一呼吸分。そんなところだろうと思っていたので、すでに最適な術を選択、詠唱していた。

  14. リフィル

    八十葉をなして、天霧らせ――地より逆撃つ雷霆樹!

  15. 怪物の足元に魔法陣が出現し、そこから真上に稲妻の束が走った。逆巻く雷霆――一瞬にして稲光る大樹が屹立し、轟音とともに怪物の全身を喰らい尽くす。

    もがき、暴れながら、怪物が地面に倒れた。

  16. リフィル

    逃がすな、ルリアゲハッ!

  17. ルリアゲハ

    そうしたいのはやまやまだけど!

  18. 続く銃弾が怪物の腕に殺到し、一本を引きちぎった。攻撃が功を奏している――と見えながら、ルリアゲハの表情は硬い。

  19. ルリアゲハ

    腕で受けてる・・・・・・

  20. 腕一本を犠牲にして致命傷を逃れた怪物が、再び姿を消す。リフィルとルリアゲハは、即座に互いの背中を合わせて全方位を警戒した。風のそよぎ、影の揺らぎさえも見逃すまいと、感覚を極限まで研ぎ澄ませる。

    少しして――リフィルは、憮然と構えを解いた。

  21. リフィル

    反撃より逃亡を優先したか。

  22. 足元に魔法陣を形成し、人形を沈み込ませていく。

  23. ルリアゲハ

    でも、深手を負わせたわ。あれじゃ、人に化けるのも難儀するでしょ。探し出すのは難しいことじゃなくてよ。

  24. リフィル

    問題は、どう仕留めるかよ。見つけるたびに逃げられたんじゃ、話にならない。

  25. ルリアゲハ

    確かに。何か方策を考える必要がありそうね。他の〈メアレス〉とも相談して。

  26. リフィル

    首の奪い合いになる。

  27. ルリアゲハ

    首を獲れないよりマシでしょ。それに、情報提供料だけでも値がつくはず――

  28. 言いかけたルリアゲハが、ふと脇に目線をくれた。

    そこにひとりの少女が降ってくる。

  29. ミリィ

    おっとと。

  30. 近くの屋根から飛び降りてきた――のだろうが、どうにも勢いがつきすぎたようで、ほとんど路地に突き刺さるような着地となった。下手をすれば膝を壊しかねないところだが、全身でうまく衝撃を吸収したらしく、痛そうな顔はしていない。

  31. ミリィ

    えーっと。あれ? もう倒しちゃった?

  32. ルリアゲハ

    残念だけど、逃げられちゃったわ。ミリィ。

  33. ミリィ

    えー、まじすか? 〈黄昏〉サンセット〈墜ち星〉ガンダウナーのコンビから逃げきるなんて、どういう〈夢〉してんです? あの〈ロストメア〉。

  34. ルリアゲハ

    自由の身になるのが望みだそうよ。

  35. ミリィ

    あー、そういう系。あたし、いちばん苦手なタイプかも。

  36. リフィル

    一撃で仕留めれば、逃げられる心配もない。

  37. 視線は、少女の手にした武器に向いている。人の身の丈ほどもある、巨大な機械の塊――火薬の炸裂によって杭を射出する杭打機パイルバンカーだ。

  38. ミリィ

    やー、それが。見つけたはいいもんの、これが、一発も当たんなくて。どーもああいうタイプって苦手なんすよねえ。

  39. 背丈は小柄で、顔立ちもあどけなさが抜けきれていない。とても巨大な杭打機を使いこなせるようには見えないが、真実は逆だった。杭打機はその特性上、〝至近距離まで接近〟して〝急所を狙う〟という二重の難題ハードルを乗り越えなければ真価を発揮できない、おそろしく扱いづらい武器だ。異様に卓抜した戦闘センスの持ち主であるミリィくらいしか、こんな武器で戦おうとは思わない、というのが正確なところだった。

  40. ルリアゲハ

    なるほど。ミリィが見つけて追ってたところに、あたしたちが割り込んだ形だったわけね。道理で、急いで逃げていたわけだわ、あの〈ロストメア〉。

  41. ミリィ

    で、どうすんです? あれ。

  42. リフィル

    〈煙〉と話す。

  43. 端的に言って、リフィルはすたすたと歩き出す。

  44. ミリィ

    あ、やっぱそれかぁ。あたしも行っていいすかー?

  45. ルリアゲハ

    好きになさいな。あの子はどうせ何も言わないんだから。

  46. ミリィ

    うすうす!

黄昏メアレス プレストーリー

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