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  1. ほどなくして、丘の上の野盗団は壊滅した。

    抵抗する者はミハネが残らず叩き伏せ、逃げる者、降参した者はユウェルが魔法で無力化した。結果、日が墜ちきる頃には、すべての野盗が陣地に転がる結果となった。

    けがをした連中にミハネが応急手当てを施している間に、ユウェルは陣地の中央ではためく旗を手に取り、魔法による分析を行った。

  2. ユウェル

    やはりな。この旗が呪具――というか禁具だったんだ。

  3. ミハネ

    結局、どういう効果だったんだ? 俺はなぜ勝てた?

  4. ユウェル

    本来の実力差が戻ったからさ。

  5. ユウェルは肩をすくめた。

  6. ユウェル

    この禁具は、雰囲気ムードを媒介にして、人の精神に干渉するものだ。おまえがさっき負けたのは、野盗どもがみんな〝ベデンが勝つ〟と信じてたからさ。ついでにおまえもな。

  7. ミハネ

    俺も?

  8. ユウェル

    〝ベデンが勝つ〟という雰囲気ムードが、おまえの精神に干渉し、無意識に手加減させた。

  9. ユウェル

    それでも、最初の一撃を見る限り、実力差が覆るほどじゃなかったはずだ。しかし、攻撃を受けられたことで、おまえも雰囲気ムードに呑まれた。〝ベデンは本当に強いんだ〟と思い込んでしまったんだ。素直にな。それで、本来の実力を発揮できなくなってしまった。

  10. ミハネ

    俺が勝てたのは、その雰囲気ムードが崩れたからか。

  11. ユウェル

    そう。俺が空気を悪くしたことでな。

  12. ミハネ

    なるほど。恐ろしい禁具だな。代償はないのか?

  13. ユウェル

    ある。解析したところ、持ち主は性別が逆転してしまうらしい。

  14. ミハネは、カッと眼を見開いた。

  15. ミハネ

    ベデンは女だったのか?

  16. ユウェル

    なわけないだろ嘘だよ馬鹿。

  17. ミハネが憮然と黙るのを見て、ユウェルは呵々と大笑いした。

  18. ユウェル

    そんなふうに人の言うことをすぐ信じる奴ほど、この禁具に呑まれやすい。手下連中も単純そうな奴らばっかりだったろ。

  19. ミハネは鼻を鳴らし、そっぽを向いた。

  20. ミハネ

    それで、これからどうする。

  21. ユウェル

    禁具は回収したし、あとは全員に魔法をかけて、街に出頭させるのがいいだろう。それで賞金をもらったら、飯でも食うか。

  22. ミハネ

    野菜スープ以外のな。

  23. ぼそりとした一言に、またユウェルは笑った。この男の場合、冗談でも皮肉でもなく、本心から言っていそうなのが、大いに笑えた。

  24. ユウェル

    そう、野菜スープ以外のだ。

喰牙RIZE3 -Fang-O’-Blazer- サイドストーリー

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