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  1. 誰も使っていない粗末な天幕に放り込まれた。

  2. ベデン

    飯の準備ができたら出てこい。正式に俺の部下にしてやる。

  3. ベデンは揚々と告げ、外に見張りを残して出て行った。

    武器を取り上げられることも、縛られることもなかった。ベデンの自信のあらわれだ。

    少しして、ミハネが呻き声を上げ、目を覚ました。

  4. ミハネ

    ……負けたのか。

  5. ぼそりと言って、こちらに視線を向けてくる。ユウェルは嘆息して頭を振った。

  6. ユウェル

    奴は呪具を持っていなかった。

  7. ミハネ

    なら、実力か。あれほどの猛者がいるとは。

  8. ユウェル

    そんなに強いのか、あいつ。とてもそうは見えないが。

  9. ミハネ

    達人であればあるほど、己の強さを見せないものだ。あの男も、その類だろう。

  10. わずかに目を伏せたのち、ミハネは再びユウェルを見た。

  11. ミハネ

    どうする。

  12. ユウェル

    どうもこうも。とっととおさらばするしかないだろう。呪具を持ってないんじゃ封印もへったくれもないし、とっちめるにも勝てなきゃしょうがない。

  13. ミハネ

    だめだ。放っておけば人を襲う。ここで倒さなければならない。

  14. 強い意志を込めて、ミハネは言った。ユウェルの言うことに反駁したのは、ネザンが亡くなってから初めてのことだった。

    得体の知れない怒りが込み上げ、ユウェルは声を荒げた。

  15. ユウェル

    ああそうか。おまえもとうとう、俺に愛想が尽きたってわけだ。

  16. ミハネ

    なに?

  17. ユウェル

    そりゃそうだ。頼んだスープはまずいし、立てた作戦は失敗だ。俺だってそんな奴は信用しない。

  18. ミハネ

    ユウェル――

  19. ユウェル

    俺はネザン師じゃないんだ!

  20. 叫ぶ。カッと全身の血が昂り、沸騰するような心地がした。

  21. ユウェル

    ネザン師ほどの知識も判断力も度胸もない! 間違わずになんていられるか!

  22. ユウェル

    おまえだって悪いんだ! なんでも俺の言う通りにしやがって! それで俺が間違えたら俺のせいか? 間違ってるならそうと言え! 言ってくれよ――頼むから!

  23. ネザンが生きていた頃は、ネザンの判断に従えば良かった。禁具絡みの事件は、判断を誤れば死に直結することも多い。ネザンは冷静で、知識にあふれ、機知に富み、そして自信に満ちていた。ユウェルはただ指示通りに最善を尽くせばよかった。

    なのに、今は自分の判断で決めなければならない。こんなに恐ろしいことはなかった。

    持っている知識を総動員しても、己の決断が正しいかどうかはわからなかった。いつも手探りで、不安だった。これでいいか、穴はないか、考え違いはしていないか――

    誰かに助言してほしかった。だがミハネは何も言ってはくれなかった。それが無性に腹立たしかった。

    ユウェルの叫びを、ミハネは黙って聞いていた。刃のような双眸が、情けなくわめく青年の姿を冷たく映し出している。

    馬鹿にしているんだ――ユウェルは自嘲した。こいつはいつも言うことを聞くふりをしながら、俺のことを馬鹿にしているんだ。それ見たことかと。おまえごときにネザン師の代わりが務まることかと。

    叫ぶだけ叫んで、ユウェルは黙った。荒い息遣いが天幕の中にこだました。無様だ、と思った。いっそ笑い出したくなるほどに。

    ややあって、ミハネが口を開いた。

  24. ミハネ

    ユウェル。

  25. ユウェル

    なんだよ……

  26. ミハネ

    俺は、おまえが間違っていると思ったことはない。

喰牙RIZE3 -Fang-O’-Blazer- サイドストーリー

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