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  1. しばらく経って、ユウェルたちはベデンに呼び出され、天幕を出た。

    陽が暮れかかり、焚火と食事の準備が始められている。すでに酒をかっくらって陽気に騒いでいる連中もいた。

    陣地の中央に座るベデンの元へ近づくと、彼はニヤニヤと笑みを向けてきた。

  2. ベデン

    さて、頭も冷えただろ。おまえたち、俺の仲間に――

  3. ユウェル

    もう一回、勝負しろ。それで負けたら仲間になってやる。

  4. たちまち周囲の野盗たちから野次と罵倒が飛んだ。「男らしくねえぞ!」「何度やったって同じだ!」

    彼らがひとしきりわめいたところで、ベデンが片手を挙げて黙らせた。

  5. ベデン

    いいぜ。それならもう一度やってやる。

  6. 腹の肉を震わせながら起き上がり、装飾だらけの剣をつかむ。

    応じて、ミハネが前に出た。

    ベデンは意気揚々と剣を振り回し、自信に満ちた言葉を投げる。

  7. ベデン

    いいか。何度でも言ってやる。俺の方が――

  8. ユウェル

    おまえは弱い!

  9. 突如、ユウェルが腹の底から大声を発した。ベデンがぎょっとなる。

    ユウェルはわめき散らすような大音声で言葉を連ねた。

  10. ユウェル

    おまえは詐欺師だ、ペテン師だ! 呪具の力で強いと見せかけているだけの臆病者だ! 今からそれを暴いてやる! 種はすべて暴いたからな、おまえはミハネには勝てない!

  11. ベデン

    な――

  12. ユウェル

    さあさあみなさんご注目! 化けの皮が剥がれるぞ! 前回の結果は覚えているな? あれがまったく逆になるって寸法だ! おまえも、おまえも、そこのおまえも、みんな騙されていただけだ! 奴は弱い! 何もかもがハッタリだ! 今からそれを見せてやる!

  13. ベデン

    てめ――

  14. ユウェル

    口を閉じてろ、クソ凡愚! おまえと話すと時間の無駄だ、おまえの存在自体が無駄そのもの――っておいミハネおまえいいから早くやれ!

  15. ミハネ

    わかった。

  16. ミハネが動く。

    激流のごとき打ち込み。前回防がれた初手とまったく同じ、袈裟懸けの一閃。

    ベデンがあわてて反応しようとするが、その動きは明らかに鈍かった。

    烈刀が、ベデンの左肩口を鮮やかに直撃する。

    ぼぎゃり、と痛々しい音がして、ベデンが絶叫とともに倒れた。

    血は出ていない。峰打ちだった。ミハネは、ひいひい泣きながらうずくまるベデンを見下ろし、ひとつうなずく。

  17. ミハネ

    なるほど、弱い。

  18. そして、あんぐりと口を開けている野盗たちを見回し、手にした刀を持ち上げる。

  19. ミハネ

    武器を捨てて、降参しろ。刃向かう者は、すべて倒す。

  20. 告げるや否や吹き抜ける旋風と化し、野盗の群れに突っ込んでいく。

    剣閃が走り、数人の野盗が冗談のように軽々と吹っ飛んだ。そこでようやく他の野盗も我に返り、あわてて武器を捨てる者、怒りに任せて斬りかかる者、ほうほうのていで逃げ出す者など、陣地は一瞬で混沌の様相を呈した。

    ユウェルはその間に手近な天幕の陰まで下がり、逃げ出そうとする連中に魔法を飛ばして昏倒させていった。

    鬼神のごとく暴れ回るミハネを見て、思わずつぶやく。

  21. ユウェル

    そりゃ、あんな作戦を『妥当』と言うわけだ。

  22. そして、はあ、と盛大なため息を吐いた。

喰牙RIZE3 -Fang-O’-Blazer- サイドストーリー

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