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  1. 戦士たちの勝鬨が、冷たい夜を熱く震わす。

  2. ゾイス

    勝った……

  3. ゾイスは、がくりと膝を突いた。

    トーテムの力を借り受ける〝ロード〟は、使い手の体力と魔力を大いに消耗させる。初めて〝ロード〟に成功したゾイスは、まるで魂が抜けたような虚脱感を覚えていた。

    ぽん、と肩に分厚い手が置かれた。ゴノムが、憮然とこちらを見下ろしている。

  4. ゴノム

    いろいろと。事情があったようだな。

  5. ゾイス

    旦那――

  6. ゴノム

    あの戦いぶりを見て、おまえの根性を疑う者はいない。だが、やったことはやったことだ。腹を割ってわけを話し、ツケを払い、迷惑をかけたみなと、族長に謝る。それだけはやってもらう。

  7. ゾイス

    ああ。わかってる。でも今は――

  8. 最大の功労者に礼を言うべきだ。そう思い、顔を上げて周囲を見回す。

    しかし、プグナの姿はどこにもなかった。

  9. ゾイス

    あれ――あの人は?

  10. ゴノム

    そういえば、見当たらんな……

  11. 見た目からは想像もつかないほどの達人だった。ゾイスや村人たちが戦わずとも、彼ならひとりであの怪物を倒せたのでは、と思えるほどだ。

  12. ゾイス

    (ひょっとして、わざと?)

  13. ゾイスが立ち向かってきた脅威を見せつけ、村人たちに奮起を促し、共に戦うことでゾイスへのわだかまりを解消させるために、あえてここで呪装符を割ってみせたのか。

    ゾイスは、ちらりと割れた呪装符に視線をやった。

    これまで倒してきた魔物は、この呪装符から生まれたものなのだろう。ゾイスは、呪装符が生み出した怪物を、呪装符の力で倒すという一人相撲を続けていたのだ。魔物がどんどん強くなっていったのは、村人たちの怒りと恨みが募った結果だったのかもしれない。

  14. ゾイス

    (だとすると、あの女は何がしたかったんだ?)

  15. 呪装符をくれた女の、底知れぬ瞳を思い出す。この世のすべてを面白がるような瞳。ゾイスが何も知らず破滅への道を進むことすら、彼女にとっては享楽の一種に過ぎなかったのか。

    呪装符の脇に、何かが落ちている。ゾイスは疲労困憊した身体に鞭打って、その何かを拾いに行った。

    プグナのつけていた黒眼鏡サングラスだった。

    手に取ると、あの寡黙な戦士の眼差しが思い出された。

    新たな道へ進んで見せろと、そう告げられているようだった。

    この勝利を忘れるなと。過ちを犯しそうになったら、これを見て自分を思い出せと。

    前に進む勇気と力を得るために、これをつけておけと――

    ゾイスは星空を見上げた。

    この空の下のどこかにいるであろうプグナへ向けて、ぽつりとつぶやく。

  16. ゾイス

    いや、つけねえから。

喰牙RIZE3 -Fang-O’-Blazer- サイドストーリー

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