コロカ事業
富山・引網香月堂の和菓子
- 店舗レポート
理想の味へ 尽きない思い
「今も理想の味に向けて微調整はしているんですよ。」
現在の引網香月堂では、引網さんと工場長の中川さんを中心として和菓子を製造しています。3代目が開発した「万葉の梅園」も、引網さんが修行から店に戻り、白あんの配合や砂糖の量などを研究し続け、10数年を経て今の味が確立したのだそうです。
しかし今なお理想の味の追求は続いており、季節によって砂糖の量や豆の配合を変え、冬はほっこりした甘さ、夏はあっさりした甘さに仕上げています。また、餡の漉し方を変える時もあると言います。
引網さんも中川さんも、和菓子を作るときは理想の味を思い描き、それに近づけるように餅の固さや練りあがりの状態を見ながら調整を加えていくのだそうです。
「会心の味にたどりつけた日は、どこか誇らしげですね。」
引網さんは中川さんを眺めながら笑って話されました。
新作の開発では、お二人で菓子の方向性を決め、引網さんが試作を作り、スタッフ全員で試食をして作り上げていくそうです。
修行時代
引網さんに修行時代のお話を伺いました。
「千葉と東京で6年ほど修行しました。ドラマにあるような環境で、掃除やお店にでるところから始まり、ようやく厨房に入ってからも洗い物をしながら先輩の技を盗むことに一生懸命でした。突然、師匠から『作ってみろ』と言われるので、それに備えていたんですよ。」
毎朝5時ころから仕込みが 始まり、遅い時は日が変わるころまで働いていたと言います。特に忙しい節句の日には、早朝2時ころから仕込みが始まるそうです。
仕事が終わってからも自分の部屋やお風呂の中で卓球ボールを握り、手の平の上で中指、薬指、小指だけを使って回転させ、手技の練習をしていたそうです。毎日、和菓子のことだけをみっちり考えた時期で、本当に貴重な時間だったとお話ししてくれました。
狭まるストライクゾーン
引網香月堂では、引網さんと中川さんがそれぞれの得意分野を担当しています。それぞれ顔を見合わせて
「日に日にストライクゾーンが狭くなっていくんですよ。」
と話されます。
お二人とも自分の作るお菓子に対して追求をし、その理想の味・形というものは時を追うごとに狭まり、自分に対する要求も高くなると言います。
引網さんが重箱の隅をつつくような指摘をすると、中川さんはそれを超えてくるようなものを作るそうです。
「重箱の隅をつつくのだけど、それが積み重なって美味しくなるんですよね。」
お二人の和菓子にかける思いにただただ感心です。
「頭に思い浮かんだものを作るのに、18年やってきてようやく一回で大まかな素材の配合を当てられるようになった。」
引網さんの言葉を聞き、和菓子の世界のさらなる奥深さを感じました。