コロカ事業

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大館・栗久の曲げわっぱ

 

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【ハチ公がお出迎え】

2009年11月に延伸した東北新幹線新青森駅から奥羽本線・特急「つがる」に揺られること1時間ほど、大館駅に着きました。忠犬ハチ公の出身地でもある大館市。駅前で出迎えてくれるのはもちろんハチ公です。雪積もる駅前ローターリーにたたずむハチ公は、渋谷駅前のものとは少し異なります。降り立った際にはぜひ注意して見てみてくださいね。

秋田県北部に位置する大館市は青森県弘前市に隣接し、冬季の積雪は50cm超。森林資源に恵まれた地であるとともに、比内地鶏やきりたんぽなど秋田を代表する食の本場としても有名です。

コロカ店「栗久(くりきゅう)」までは、ここから路線バスで秋北バスターミナルまで向かい、そこから歩いて10分ほどです。

雪かきスコップが立てかけられたウィンドウを横目に、店舗に入るとやさしい杉の香りを感じました。そこで我々を出迎えてくれたのは社長で伝統工芸士でもある栗盛俊二(くりもりしゅんじ)さんです。

 

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【武士の内職】

曲げわっぱは、きこりが柾目(まさめ)に加工した杉材(杉柾)を用いて曲げ物の器を作ったことが始まりと言われています。江戸時代には、大館城主の佐竹義方(さたけよしかた)が領内の豊富な秋田杉と漆に着目し、武士の内職として推奨、発展したものと言われています。

その特徴は、何といってもきめ細かくまっすぐな木目。このまっすぐな木目が柾目というもので、まっすぐに年輪が通っている分曲げにくいそうですがその分、きれいに丸く曲がるのだそうです。

柾目が出るようにするには、年輪に対して直角に近い角度で板を切り出す必要があります。樹齢150年以上の杉材が原木となり、1本の木から数多くとることができないため、どうしても高価になってしまいます。

軽くて美しいだけでなく、適度に水分を吸収し、熱伝導性が低いため温度を保つ効果があり、現在では、おひつやお弁当箱のほか、アイスペールやビアグラスなども作られています。

 

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【樺細工(かばざいく)と曲げわっぱ】

「栗久の製品は、曲げわっぱと樺細工の技法をベースにしているんだよ。」
この言葉をきっかけに、栗盛さんのお話が始まりました。ちなみに、樺細工とは秋田の伝統工芸品で、桜の樹皮を使った木工製品です。

栗盛さんは6代目にあたり、2代目の久吉さんの代から曲げわっぱと樺細工の製造が始まりました。屋号の「栗久」も2代目の名前からきています。


5代目となる栗盛さんのお父さんは樺細工職人として活躍されていました。映画と写真を大変好み、西洋のデザインが透けて見えるようなおしゃれで精巧な作品を作られたそうです。この日見せてくださったのは、お父さんの遺作というシガーケース。50年以上前の作品だそうですが、色褪せないデザインと精密な作りに、思わず息をのみました。

「父親が樺細工職人だったから、(父のため家業のために)自分は曲げわっぱ職人になった方がいいと思ったんだよね。」

栗盛さんは地元の能代工業高校木材工芸科に進学。卒業後は父親の下で“職人としての姿勢”を教え込まれながら、様々な技術を学んでいきました。

 

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【曲げわっぱのチャレンジ】

栗盛さんのお父さんは、グッドデザイン賞に応募することを薦めました。新しい商品を開発し、積極的に発表することが職人には大切だと考えていたからこその提案でした。

栗盛さんは四角形のお盆「角盆」を作ることにしました。それまでの曲げわっぱは円形や小判型の商品しかなく、四角形の製品は存在していませんでした。

案の定、角盆作りでは角を作ることに苦心したそうです。角の半径を100mmにしないと折れてしまい、試作品を作っても

「それは丸に近い四角ではなく、四角っぽい丸だ。」

とお父さんに言われ続けました。

父親と息子のせめぎあいのなか、角の半径を50mm以下にすれば四角

になるとイメージはできたものの、なかなか実現にまで至りません。そんなとき、ジュラルミンを使って杉の板を押さえつけて曲げる“型”を使った製法にたどりつきました。
この製法により半径50mmの角を実現させた「角盆」は見事、秋田県で第一号のグッドデザイン賞を獲得することができました。そしてこの受賞は栗盛さんが曲げわっぱ作りをするうえで、とても励みになったそうです。

 

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