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  1. 我が子を授かる夢

    おまえのような〝我が子〟を手に入れられるのは喜ばしいことよ、〈夢魔装〉。でも、言うことを聞かない〝我が子〟にはしつけがいるわ。

  2. 人擬態級は、スッと酷薄に目を細めた。

  3. 我が子を授かる夢

    やりなさい。

  4. 直後、一撃が来た。

  5. ラギト

    ぐっ……。

  6. 背に、熱い衝撃が走る。ラギトは苦鳴を嚙み殺して耐えた。

  7. 我が子を授かる夢

    足りないわ。まだよ。もっと、もっとしつけを与えなさい!

  8. エインの夢

    わかったよ、〝母さん〟。

  9. 吐き捨てるような声。再度の一撃。背中が焼ける。

  10. ラギト

    おまえか……。

  11. ラギトは辛うじて首を動かし、後ろを見やる。

    エインの〈夢〉が、魔力で形成した鞭を手に、自嘲的な笑みを浮かべていた。

  12. エインの夢

    悪いね。そういうことなんだ。

  13. 鞭を一閃。魔装の上から灼熱が爆ぜる。ラギトは抑えきれない呻きをこぼした。

  14. ラギト

    エインは――

  15. エインの夢

    エインの話は本当さ。途中まではね。

  16. 一閃。まるで容赦ない打撃が、ラギトの背の装甲を削り、魔力を散らす。

  17. エインの夢

    エインはこいつらに捕まった。夢を失ったのは、こいつの〝我が子〟にされたせいさ。 だから僕はエインを助けに行った。助けられると思ってた。

  18. 一閃。灼熱。ラギトは唸る。 このまま嬲り続けられれば、体力も魔力も枯渇して、人擬態級の力に抗うことができなくなる――〈夢〉の〝我が子〟になってしまう。

  19. エインの夢

    甘かったよ。浅はかだった。〈ロストメア〉の仕業とは思ってなかった。 僕はあいつに負けて――今や無様な操り人形だ。

  20. 一閃。灼熱。ラギトは耐える。聞かねばならぬことを聞くために。

  21. ラギト

    エインは――

  22. エインの夢

    死んだよ!

  23. 絶叫。一閃。一閃。一閃。

  24. エインの夢

    僕だって抗った! 負けるわけにはいかなかったんだ! おまえみたいに抵抗して――そしたらどうなったと思う? あいつはエインを連れてきて、従わなければ殺すと脅した!

  25. 灼熱の嵐が降り注ぐ。ラギトは歯を食い縛る。背の装甲が砕け、皮膚が裂けるのを感じながらも。

  26. エインの夢

    馬鹿だった。見捨てりゃあ良かったんだ――あそこでエインが死んだって、僕が叶えばエインはよみがえるんだから! でもあの時の僕は無我夢中で――泣きながらあいつに屈服した! そしてあいつが命じたんだ――僕のこの手でエインを殺せと!

  27. 鞭が唸る。悲鳴のように。ラギトは声もなく、叫びと唸りを耳にする。

  28. エインの夢

    殺したさ! 殺すしかなかった! この手であいつの首を絞めて――それであいつがなんて言ったと思う? 〝ごめんね〟だ! ふざけるなッ!

  29. 鞭か加速する。めちゃくちゃに、でたらめに、ラギトの背中を乱打する。

    ラギトは悟る――誰がこの部屋をこんなにしたのかを。

  30. エインの夢

    ああ八つ当たりさ! でもしょうがないじゃないか! あいつがやれって言うんだから! 僕はもう逆らえない! エインを殺して、自分を叶えることもできなくなって――八つ当たり以外、何ができるって言うんだ!

  31. 我が子を授かる夢

    そうよ、愛しい我が子! あなたはそれでいい! 私のために、私が叶うために尽くすだけの〝我が子〟であればいいの!

  32. 人擬態級が笑う。叫びと唸りと苦鳴と笑いが混然一体となって、地獄もかくやというけたたましさを生み出した。

  33. 我が子を授かる夢

    さあ、もっとぶつの! もっともっとそいつをしつけるのよ! そいつが力を失って、真の〝我が子〟になれるように――

  34. 言いかけて。

    人擬態級は、ぎょっと眼を見開いた。

    鞭の唸りが止んでいた。絶叫も。苦鳴も。

    ラギトが鞭をつかんだことで。

  35. 我が子を授かる夢

    な――

  36. ラギトは、ゆっくりと立ち上がった。

    全身が熱い。あふれるほどの力がたぎる。血肉のすべてが燃え盛るようだった。

    人擬態級の魔力は、もはやラギトを拘束するに足るものではない。

  37. 我が子を授かる夢

    なぜだ――なぜ動ける!

  38. エインの夢

    〝しつけろ〟とは言われたけど、〝手助けするな〟とは言われてないからね。

  39. エインの〈夢〉が笑った。彼女の命令通り〝しつける〟ために、ラギトにつかまれた鞭を必死に引き戻そうとしながら。

    いつの間にか、彼の力は見る影もないほど弱まっていた。 自らの魔力を、ラギトに注いでいたのだ――容赦なく鞭で打ちすえながら、同時に燃えるような力を送り込み続けていた。 ラギトが、人擬態級の支配力に打ち勝てるように。

  40. ラギト

    俺に白羽の矢を立てたのは、このためか。

  41. エインの夢

    こんなやり方、あんたでないと耐えられない。

  42. ラギト

    いい判断だ。

  43. ラギトの手から鞭が消えた。エインの〈夢〉が、ついに力を失い、床に倒れていた。

  44. ラギト

    後は任せろ。

  45. 激しい痛みが背中を焼いている。だが、それ以上の炎が、痛みを忘れさせてくれる。

  46. ラギト

    行くぞ。

  47. ラギトは狼狽する人擬態級を見据え、構えた。

  48. ラギト

    情けの類は、かなぐり捨てた!

黄昏メアレス プレストーリー

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