親愛なる兄様へ。兄様がシチリアからジャポーネに戻ってしまってから、86回目の夜になりました

とうとう兄様が春休みに帰って来れなかったのは、とてもとてもさみしい

今日のおやつはパネトーネ。兄様がこの前のクリスマスに美味しいってたべてたもの。半分こしてあるから兄様はパネトーネと由仁のために早くかえってきて

パネトーネを食べたあとは海におでかけして、すっごくキレイな貝殻を見つけたの

これは今日のなかでいちばん嬉しかったこと

由仁が嬉しいなら俺も嬉しいですよ

兄様！

貝殻、兄様にも見てほしい

どんな大きさですか？

ボクの手をぎゅっとしたくらい

それならまだ小さいだろうね

兄様が想像してるよりボクの手は大きくなったよ！

そうかもしれませんね

もう兄様よりおっきくてムキムキになってるかもしれないの！

それは会うのが楽しみですね

やっぱりパネトーネも連れて、今度はボクが兄様に会いにいくの！

由仁、その貝殻を耳にあててご覧

！

音が聞こえますか？

うん。きこえる

夏休みに兄様と演奏したシューベルトのヴァイオリン・ソナチネ。兄様が弾いたピアニッシモのEの音と同じ音がする

よく覚えていますね

もうシチリアは20時を回りましたね。支度して眠る時間ですよ

兄様のところは何時？

夜中の4時です

眠くならないの？

由仁が眠ったら、俺も眠ります

兄様、愛してる。おやすみなさい。明日もまた寝る前に連絡していい？

勿論ですよ。良い夢を