コロカ事業
栗尾商店の鳴門金時菓子
- 店舗レポート
四国のおへそへ
岡山駅から高知方面行きの特急「南風」に乗り30分ほどすると、瀬戸大橋を通過する列車の窓から、大小様々な島が織り成す瀬戸内海の美しい景色が見えてきます。
香川県の平野部と讃岐山脈のトンネル群を抜け、四国に二箇所しかないスイッチバック駅の一つで秘境駅として知られる坪尻駅を過ぎると、競争するかのように列車と並走する吉野川が。
特急「南風」はさらに吉野川の作り出した「大歩危(おおぼけ)駅」「小歩危駅」に代表される渓谷の絶景を眺めながら、高知へ入っていくのですが、今回の取材は「四国のへそ」と言われる徳島県三好市の中心駅・阿波池田駅で乗り換えです。
阿波池田始発の徳島線普通列車に乗り換えて約30分で目的地の貞光駅に到着。
貞光駅から徒歩1、2分、駅前の道を真っすぐ進み、左に曲って駐車場を越えると栗尾商店です。
一見、工場のような外観に場所を間違えたかな?と思いながら扉を開け中に入ると、昭和と平成の混在したような不思議な、それでいて落ち着いた雰囲気を持つエントランスが。
その雰囲気に気圧されながら右手のドアを開け、事務所兼販売窓口へ入り名を名乗ると、今回お話を伺う栗尾実太郎社長がニッコリと笑いながら出迎えてくれました。
初代の試行錯誤
さっそく、三代目当主の実太郎さんに創業当時からのお話をお伺いしました。
初代・栗尾常一さんは、農家に生まれ15歳から菓子職人として修行し、昭和4年22歳で貞光の商店街に栗尾商店を持ちました。
当初は和菓子専門ではなく、酒・タバコをはじめとした生活食料品を扱う、よろず屋としてのスタートだったそうです。
店の切り盛りを奥様に任せ、店の奥で様々なお菓子作りに専念し、商売をされていました。
そんなある日、ふと目にした光景が栗尾商店の方向性を決定することになったのです。
近所の製糸工場で働く女性たちがこぞって、ふかし芋を買って食べる姿でした。
その姿にヒントを得た常一さんは、当時、撫養(むや)港から出荷されているため、撫養芋と呼ばれていた鳴門金時でお菓子を作ることを思いつきました。
干し芋でもくな、芋納豆でもなく。独自のお菓子を創りだす。試行錯誤の末たどり着いたのが、看板商品「鳴門うず芋」だったのです。
こだわりの鳴門金時
原材料となるサツマイモはすべて鳴門金時なのはもちろん、徳島県内の特定地域で栽培された物しか名乗ることが出来ない「なると金時」の中でも、土壌にこだわった特定の農家で栽培される鳴門金時だけを使用しています。
鳴門金時のおいしさは、なんといっても吉野川と鳴門海峡が作り出した海砂です。
その氾濫ぶりから、坂東太郎と呼ばれる利根川と並び、四国三郎の異名を持つ吉野川が少しずつ削り出した徳島の大地が、川の流れで徐々に細かな砂となり鳴門海峡に流れこみ、渦潮で有名な日本一の速さの潮流に揉まれ、山と海のミネラルたっぷりの海砂となり、鳴門の海岸に堆積します。
その海砂があるからこそ、鳴門金時が地域限定のブランド芋として流通できているのです。