コロカ事業
廣澤徳三郎工房・伊賀組紐
- 店舗レポート
手組みにこだわる
美しい刺繍のような模様の帯じめやストラップ。わずか1センチほどの幅に、華やかな柄が織り込まれています。この模様は、すべて糸を交差に組んでつくられたもの。帯締めなどに使われる組紐です。今では機械での大量生産が当たり前になりつつありますが、今もなお、すべて手仕事でつくり続けている伝統的なお店があります。
三重県伊賀地方にある廣澤徳三郎工房。初代の徳三郎氏が、明治初期に江戸から組紐の技術を持ち帰り、始めた工房です。帯締めなどすべて絹糸を手で組んでつくるため、程よいあそびができ、伸縮性があります。帯を締める際に苦しくない、使い勝手が良い、と評判です。
秋の気配も深まる10月下旬、「忍者の里」で有名な伊賀へと向かいます。今も組紐屋が軒を連ねる、西大手の町を訪ねました。
忍者の里、伊賀へ
伊賀地方は三重県北西部の、四方を山々に囲まれた盆地。伊賀鉄道の西大手駅を目指します。大阪方面から電車で向かう場合は、鶴橋で近畿日本鉄道に乗り、伊賀神戸で伊賀鉄道に乗り換えです。東京方面からの場合は、名古屋から伊賀上野駅まで直行バスで1時間半なので、こちらを使うのがおすすめです。
目的地に近づくにつれて、ぽつぽつと武家屋敷が目につきます。あいにくの雨模様で空には重い雲がたちこめていますが、電車から見る風景は、今にも忍者が表れそうな奥地の雰囲気満点です。
降り立ったのは西大手駅。そのまま商店街へ。かつて上野城の城下町で、西大手門があったところ。酒屋やゲタ屋、豆腐屋と何でもあり、賑わっていたのだそうです。廣澤徳三郎工房は、すぐに見えてきました。
忍者も使っていた組紐
伊賀には、今も30軒ほどの組紐業者がありますが、手造り専門でやっているのは4~5軒しかありません。多くの工房が機械を取り入れていくなか、3代目徳三郎さんが手組みにこだわり、伝統的な手方を守り続けているのには、この店の歴史が関係しています。廣澤徳三郎工房は、伊賀で組紐産業が始まる引き金ともなった、老舗中の老舗なのです。
「昔からこの伊賀は忍者の里と呼ばれていましてね、『萬川集海(ばんせんしゅうかい)』という、忍術の秘伝書が残っているんですが、その中に組紐が出てくるんですよ。」
廣澤さんが伊賀と組紐の歴史を教えてくれました。