コロカ事業

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岩手・花巻のホームスパン


 

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ホームスパンって何!?

我々が最初に通されたのは、棚に数種類の羊毛と多数の糸が並ぶ部屋でした。「これが洗ったばかりの羊の毛です」と菊池さんが見せてくれた羊毛は、繊維の1本1本が丸みを帯びており、柔らかさと軽さは綿菓子そのもの。この羊毛を家庭(=ホーム)で紡ぐ(=スパン)文化が、「日本ホームスパン」の名の由来です。

岩手県のこの辺りにホームスパンが入ってきたのは、昭和初期のこと。軍隊において防寒着の需要が増したことから、国は牧羊を奨励しました。牧羊には、緯度40度付近の土地が適しているとされるため、この一帯で牧羊が盛んになり、やがて農家の副業としてホームスパンが根付いていったのだとか。

同社では今、注文に応じ仕入れた糸でも織物を作っています。「羊毛だけではやっていけないので、他の業者が躊躇するような注文を受けているうちに2000種以上もの糸を扱うようになりました」と菊池さん。なんと豚の皮で作られた太い糸までありました。あらゆる糸に対応できる技術力が、国内外のブランドから信頼を勝ちとっていったのでしょう。

 

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羊毛が糸に変わるとき

まずは羊毛を染色する工程からはじめます。1~2時間ほどかけて染めた糸は敷地内に干して十分に乾燥させたあと、カーディングと呼ばれる機械にかけられます。剣山のようなローラーをいくつも通った羊毛は、繊維の方向がきれいにそろって出てきます。

そして、いよいよ紡ぐ(=スパン)工程に入ります。職人さんは、左手で繊維の量を調整しながら右手で繊維に縒(よ)りをかけることで、一定の細さの糸を紡ぎ出していくのです。糸は途切れぬように継ぎ足され、同時に巻き取られていきます。

次に糸は、経糸(たていと)の長さや張り具合をそろえる整経機にかけます。さらにその後、この経糸を1本1本綜絖(そうこう)の輪に通す「綜絖通し」を行います。綜絖通しはいわば、生地の編み方を決める設計図を描く作業。緊張感と集中力が必要となります。こうした工程を経て初めて、経糸と緯糸が織機にかけられるのです。

 

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国内外のブランドが注目

工場内にはおとぎ話でみるような木製の機織り機が並んでいますが、この日実際に動いていたのは機械式の織機でした。菊池さんによれば、「生地サンプルを手織りで作り、ブランドの担当者からOKをもらったり、注文が入ったりしたら機械で織ります」とのこと。そう聞いて織機に目をやると、まさにブランドからの注文で生地が織られている最中でした。糸が伸びすぎたりたゆんだりせぬようチェックしているのは、同店の社長である菊池完之さんです。

この織機は、従来のものを改良しあえてスピードをダウンさせたものなのだとか。「こうすることで手織りと同等の風合いを、均一に出すことができるのです」と、菊池さんは教えてくれました。

こうして出来上がった生地は、国内外の有名ブランドに出荷されるほか、オリジナルブランドのストールやマフラー、財布や名刺入れとなって同店に並びます。「ブランドからは注文がなかったものの、うちでは『これっていいよね!』と自信があるものも製品化し、置いています」と菊池さんは言います。製品にはひとつひとつ、デザイナーと実際に織った職人さんの名前を記載したタグがついています。なかには、社長自身がデザインしたものもありました。

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