『黒ウィズ』デザイナーブログ Vol.5【中途入社 / 3D背景デザイナー編】 『黒ウィズ』デザイナーブログ Vol.5【中途入社 / 3D背景デザイナー編】
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『黒ウィズ』デザイナーブログ Vol.5【中途入社 / 3D背景デザイナー編】

白猫黒猫本部
3D背景デザイナー

牛久 潤一

専門学校卒業後、大手コンシューマーゲーム会社へ新卒入社。背景デザイナーとして6年間勤務した後、スマホゲーム会社に転職して背景制作や外注管理に従事。2018年4月、コロプラに中途入社。

2Dイラストレーターの乳母さんから、『クイズRPG 魔法使いと黒猫のウィズ(以下、黒ウィズ)』デザイナーブログVol.5 のバトンを受け取りました、背景デザイナーの牛久です。
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新卒でコンシューマーゲーム会社に入社して以来、16年ほどゲーム開発に携わっているのですが、気づけばキャリアの半分以上がスマホゲーム開発になっていました。そしてコロプラ入社後はずっと『黒ウィズ』の3D背景を担当しています。

僕がスマホゲームの開発に初めて携わったのは2010年頃でした。当時はまだスマホそのものが新しいプラットフォームだったので、この業界に身を置いてスキルアップしていきたいと考えて転職しました。

コンシューマーゲーム会社ではモデリング担当、テクスチャ担当、ライティング担当など分業制になっていて、ピンポイントに専門的な技術を向上させる意味ではとても恵まれた環境でした。一方、当時のスマホゲーム会社はコンシューマーゲーム会社と比べると開発メンバーが格段に少なかったため背景完成までのほぼ全工程を担当するような仕事ができ、非常にやりがいもあり魅力的でした。

また、スマホゲーム会社では背景の完成度をより高めるために、背景デザイナーが直接、エフェクトデザイナーやエンジニアなどと関わる機会も増えます。ただ背景を制作するだけでなく、客観的な視点でユーザーさまに楽しんでもらえる背景を他のスタッフと一緒に考えて作ることができるので、完成したときの達成感が大きいです。

この動画(『黒ウィズ』のBirth Of New Order2 内の最終ステージ)は、3D制作からライティング、仕上げまで、全て担当させていただきました。

『黒ウィズ』は制作すべきモノが多いコンテンツのため、使用するマップの一部を協力会社の方とタッグを組んで制作しており、僕は背景モデル制作と同時にディレクション担当という形で携わっていますので、今回は背景ができ上がるまでの流れを、実際にコンテンツで使用された背景データを使って、解説していこうと思います。

ちなみに上記の動画は、2Dデザイナーチームが制作した以下のラフデザインを元に、私が3Dモデル制作をして完成させたものになります。
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『黒ウィズ』の新イベントで使用する背景デザインがどのようなプロセスを経て完成されるかを説明していきます。

1 シナリオライターにヒアリング

シナリオライターと一緒にどのような世界観にしていきたいかなど、すり合わせをしていきます。
物語の展開に沿った絵作りをしていく必要がありますので、必要なモチーフやおおまかなマップの構成などを組み立てていき、徐々に背景のイメージを膨らませていきます。

2 資料集め 〜 ラフ制作

シナリオライターの「イメージ」を具体化するために、しっかり時間をかけて資料を集めていきます。
多くの資料を基に、Adobe Photoshopを使用してイメージのラフ画を制作していきます。このラフ画によってスタッフや協力会社に世界観の方向性を示せるようにしていきます。その間にもシナリオライターにイメージの方向性が合っているか確認し、ブラッシュアップしていきます。

下記の画像はシナリオライターとのヒアリングで得た情報から集めた資料を参考にしつつ仕上げたラフ画です。この背景の場合、昼と夜の2つのマップを制作しました。
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(2020年3月10日に開放された『黒ウィズ』エリア13 内の秘境の村)

3 本制作

コンセプトアートを基に3Dソフト(Autodesk Maya)に落とし込んでいきます。協力会社に制作を依頼する場合はラフ画や資料、そして事前に3Dソフトで配置したラフモデルをまとめてお渡ししています。

下記は指示書の一部です。イメージラフと、配置するモデルの構成図など制作に必要な資料を共有していきます。
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私の方でモデルを制作する場合には、まずはラフモデルを制作します。最初から作り込むと訂正に時間がかかるためです。カメラから見た構図などに問題がないか確認しつつ徐々に作り込んでいきます。

下記はAutodesk Mayaでモデリングと頂点カラーでライティングの雰囲気などを確認しています。
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ある程度モデルを作り込んだ段階で、テクスチャを制作していきます。テクスチャも最初から描き込むことはせずにベタ塗りのテクスチャをモデルに貼って、全体的な配色や雰囲気を確認していきます。それぞれのモデルの基本色が決まった段階で徐々に作り込んでいきます。
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一通り作り込んだモデルをUnityに取り入れて、ゲーム画面のアングルから背景を確認します。このときにモデルの大きさや配置場所を微調整していきます。本制作の間もシナリオライターに適宜確認をとり、方向性をすり合わせしていきます
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4 背景モーションとエフェクトを加える

背景に魂を吹き込む要素として欠かせないのが、モーションとエフェクトです。モーションデザイナーやエフェクトデザイナーと事前に打ち合わせをしていく中でどのような場面の展開なのかなど細かくすり合わせをしていきます。

夜バージョンのマップでは花や虫を少し発光させたり、空から射し込む月明かりや霧などの表現に様々な効果を加えることで説得力のある絵に仕上げていきます。
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こちらのマップはエリア13で登場した最終マップです。世界崩壊を表現した場面で、大地を揺るがし地盤ごと宙に浮遊して消滅する様子をモーションやエフェクトでも表現しています。背景にエフェクトやモーションを加えることで臨場感をもう一段階アップさせることができます

5 実機出力のチェック

完成したデータはエンジニアに依頼をして実機上に出力していきます。実機上に表示するとUIやキャラクターの絵と干渉してしまう問題も起きるため、ゲームプレイをしながら念入りにチェックしていきます。問題がなければリリースに向けてデータを反映させていきます。

背景制作において力の見せどころとなるのが、シナリオライターから提示された情報をビジュアル的にデザインしていく工程です。例えば、何もない砂漠でも単調になりすぎないためにどのような要素を取り入れて、世界観に沿った砂漠の見せ方にするかなど、世界観の特性を生かして背景づくりしていくことが大切です。

難しいことも多々ありますがそれらの課題を乗り越えて、一つの世界観として見えてきたときの達成感は仕事として最も楽しいと感じる瞬間です。いろいろ悩みつつもその世界観に引き込まれるようなクオリティに仕上がっていきゲームの一部に組み込まれたときは、「物語の1ページを作った!」という大きなワクワク感があります。

背景デザイナーとして大切にしていることは、キャラクターや世界観を魅力的に伝えられているかということです。その先の展開を知りたい!と興味付けさせる要素としては背景も大きな役割を担っていると思っているので、インパクトのある絵作りをしていくように心がけています。

下記の背景はボスとの最終決戦に向けて、激しい演出を組み込んだ背景です。

このマップではボスキャラも背景上に絡めながら出現させているので、キャラモデラーにマップの構成に合わせて瓦礫や結晶を作ってもらいました。

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ボスの触覚によって道路を破壊する瓦礫やボスの攻撃で放つ結晶モデルを別途制作してあらかじめ背景に組み込んでいます。これらのモデルをモーションデザイナーがシチュエーションに沿ったモーションをつけていきます。
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実際にモーションを加えたのが下記の動画です。

最後にエフェクトデザイナーにエフェクト効果を加えてもらうことでクオリティーの高い背景に仕上げることができました。

世界観に沿った背景になっているかなど、第三者の意見も取り入れていきトライ&エラーを繰り返しながら完成度の高い背景に仕上げていきます。

このように背景モデルが完成するまでにはいろんなスタッフの協力があって完成していきます。『黒ウィズ』の開発チームは分け隔てなくいろんな意見やアイディアが飛び交う、風通しの良いチームだと思っています。一人ひとりがプロ意識を持って制作しているチームなので、日々の業務を通してさらに成長できる、とても最高な環境です。

3D背景デザイナーの仕事ではゼロから全て自分一人だけで制作することはありません。全体の世界観をしっかり理解し方向性に沿った制作をしていくためにも、各分野の担当の方とのコミュニケーションが必要です。
それらの情報を背景チームや協力会社に伝達し足並みを揃えて制作していきます。なのでチーム間でのコミュニケーションは必要不可欠です。

僕がコミュニケーションで大切にしていることは
「人の話を最後まで聞く」
「相手にわかりやすく伝える」
という2点です。

そして何よりも大事だと思っていることは「達成できたことを承認する」ということです。依頼した側の自分にとっては「できて当たり前」のことでも、相手にとっては(こちらには直接見えない部分も含めて)努力して成し遂げたことだと思います。そこをしっかり汲み取ってあげることで、また新たなチャレンジをしようと思える姿勢が生まれるのではないかなと思います。

以上、背景デザイナーの牛久でした。

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