コロカ事業
熊本・白玉屋新三郎の白玉
- 店舗レポート
白玉粉の生まれたわけ
もともと白玉は、もち米をより長く保存できるようにと考えられたもの。米が余るほどにあったという土地ならではの、知恵の賜物でした。もち米をここのきれいな水にさらして洗いながら臼で挽き、水とともに余計なものを取り除いて、最後に絞って固めたものを細かく砕いて乾かすと、白玉粉となります。
こうすることで、虫がつきやすくなる梅雨の時期以降も安心して保存しておくことができました。ところが、手がかかるため、なかなか庶民の口に入るものではなかったと言います。
「米は昔から日本人の主食ですが、もち米というと、お正月や収穫の時期などお祝い時しか食べられない特別のお米でした。そのもち米にさらに手をかけてつくる白玉は超がつくほどの高級品。この辺りの庶民ではなく、上方に運ばれて高貴な方たちが食べたものだったそうです。」
石臼ひきにこだわる
現在、白玉屋では、佐賀県の有明海に面した地域のもち米を使って、白玉粉をつくっています。
さらに代々受け継がれてきた製法で、白玉屋がこだわり続けているのが「石臼碾き」の手法です。製粉はグラインダーのような機械を使えば時間がかかりませんが、摩擦熱でもち米のでんぷん質が変質して、本来のおいしさを失ってしまうのだとか。
店の前に置かれていたのは、昔使われていた石臼です。今は、重さや衛生的な問題から、小さめの臼に改良して使っています。
「私が小さい頃は、和紙を貼った木枠が何千枚もあって、それで白玉粉を日乾していたんですね。天気が急変したり、風が吹いたりすると効率が悪かったんです。父は、そうした手しごとをシステム化して安定的に白玉をつくれる仕組みをつくりました。私も伝統を守る部分と、改良する部分の両方を大切にしてきました。工場にある機械のほとんどが、父や私が開発したオリジナルの機械です。」
手づくりの柔らかさを
製造部長の寺田いく子さんが、工場を案内してくれました。12月の中旬とあって、工場では鏡餅の製造の真っ最中。残念ながら白玉粉の製造は見学できませんでしたが、こんな話をしてくれました。
白玉屋では、白玉粉だけでなく、白玉に生成したものも商品として販売しています。あんみつやお汁粉と一緒に冷凍保存するので、ぜんざいなどは、箱に入ったままレンジで温めるとすぐに食べられるのだとか。
「お雑煮も、パッケージのまま温めるだけで手軽に食べていただけます。もともと白玉は冷凍させると「風邪をひく」と言って、固くなってしまうのですが、改良を重ねて本来の柔らかさを残せるようになりました。」
「おばあちゃんの手づくりのような柔らかい」白玉を届けるために、さまざまな改良が行われてきたのです。