コロカ事業
村上重本店の京つけもの
- 店舗レポート
この道40年の職人気質
今回お話を聞かせてくれたのは、村上重で40年以上も漬物の製造に携わってきたという、技術顧問の岡本好弘さん。「村上の味を守ること」に妥協を許さない職人気質ですが、話し出すと笑顔の絶えない方でした。
村上重本店は江戸時代の天保年間(1830-1843年)からこの地で漬物屋を営んできたと言います。のれんにある「丸に十文字」の紋は薩摩藩島津家のもので、幕末に高瀬船で訪れた薩摩の殿様が、村上重のそばでひと休みした折にここの漬物を食べて感銘を受け、紋の使用を許されたと言い伝えられています。のれんの上にかかる立派な「千枚漬」の看板が、この地に長年続いてきた老舗の風格を表しています。
聖護院かぶら
これまでに、村上重で販売するほとんどの漬物を手がけてきた岡本さんですが、この看板に表れているように、もっとも力を入れているのが千枚漬だと話します。
原材料は主にかぶらと塩と昆布。この素材の旨みを最大限に引き出す製法でつくられます。かぶらは、主に丹波地方で育つ「聖護院かぶら」と呼ばれる京野菜です。収穫時期の毎年11月から2月末頃までが千枚漬の製造販売期間でもあり、この間、岡本さんは毎日朝4時半に起きて農家に仕入れに通います。
「かぶらの形と皮の張り具合を見るとその質がわかるんです。ぽんぽんと叩けば、いいかぶらはピーンと綺麗な音がはね返ります。」
そう、嬉しそうに語る岡本さん。きめ細かな色白の身のしまったかぶらが目に浮かびます。
自然の味を引き出す
村上重の千枚漬けには、甘酢やみりんで「味をつける」という発想がありません。
その漬け方は、こうです。かぶらを丸のまま厚めにスライスして、まず塩で下漬けします。その後が本漬で、下漬したかぶらと昆布を重ね入れ、重石を乗せます。重石の加減も、今日は90kg、明日は60 kg、そして50 kgに減らす、など判断は岡本さんの腕一本にかかっています。漬ける期間は諸条件により違ってきますが、1週間ほどで漬け上がります。
「一年ごとに気候もかぶらの性質も違うので、毎年やり方が少しずつ変わるんです。まったく同じだったことは一度もない。千枚漬けをこんな風に漬けるのは、日本全国でもうちだけではないでしょうか。酢やみりんを使わないので、とてもさっぱりしているんですよ。」