コロカ事業

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千葉・木戸泉酒造の純米AFS


 

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海外にも誇れる日本酒を

「戦後すぐ、3代目にあたる私の祖父が海外を訪れた際、出された日本酒があまりにまずかったそうなんです。海外でこんな日本酒しか出せないようではダメだと考えて、思い立ったのが長期貯蔵酒でした。当時は船便の時代。長時間の悪条件下でも品質を保てるお酒が必要だったのです」

長期間熟成に向く甘みと酸味がしっかりとしたお酒。それを実現するためには、これまでの製法を変える必要がありました。そこで3代目の荘司勇さんが、当時技術顧問だった元大蔵省技官の古川薫さん、新潟県にある住乃井酒造の安達源右エ門さんとともに試行錯誤して完成させたのが、現在も続く独自製法「高温山廃モト仕込み」だったのです。

開発を始めてから、成功までに約10年。昭和46年に都内で初めて古酒を販売すると、飛ぶように売れてその実力を証明しました。

 

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高温山廃モト仕込みとは?

日本酒は、蒸した米に麹を加えて糖化させ、酵母によって糖をアルコールに変えて作られます。その過程で、雑菌の繁殖を防ぐために「乳酸」を必要としますが、乳酸菌の力を利用する方法を「山廃モト仕込み」、人工生成した乳酸を添加するのを「速醸式」といいます。全国にある約8割の蔵元が、短時間で簡易に出来る速醸式を採用しています。

「人工生成された乳酸と違い、乳酸菌は生きている微生物。生きているから変化するし、乳酸菌の機嫌を損ねるとお酒をダメにするリスクもある。そのために蔵人の技術が必要です。でも、味に深みや幅が生まれる可能性も大きいんですよ。」

さらに加えて、通常は8度のところを55度で仕込んだり、日本酒に2種類しか生息しないという生の乳酸菌を培養したりと、3代目が編み出した製法は独特で大胆なものでした。

 

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ワインみたいな「AFS」

現在、古酒は『古今』の銘で販売されていますが、もうひとつ木戸泉を代表するお酒に「AFS(アフス)」があります。この名前は、先ほど挙げた安達さん、古川さん、荘司さんのイニシャルからとったもの。食の多様化や海外からの観光客増加を見すえて、洋酒のような"濃厚多酸酒"を作ろうと高温山廃モト仕込みをベースに開発されました。

しかし、その個性的すぎる風味が当時は受け入れられず、その後製造を中止。平成13年に復活させたのが、5代目の勇人さんです。古酒用だったAFSの生酒を試飲に出してみたところ「おいしいね」と評判に。現在では生酒と古酒の両方を販売しています。

冷やした生酒は口あたりが軽く、すっきりとした酸味と甘みがワインのよう。「海外にも通用する日本酒を」と取り組んできた3代目の想いが、時代を経て実を結んだのです。

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