コロカ事業

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神奈川県大磯町「井上蒲鉾店」のはんぺん


 

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【こだわりの秘訣】

井上さんがこだわる手作りとはどんな工程なのか、店舗の奥にある工場を実際に見学させていただきました。工場は衛生を保つためにしっかり設備を整えられており、当然のことながら入退室の際なども細心の注意を払って運営されていました。

 

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原料の身をする

まず、原料の生のグチの身を1匹ずつ包丁で捌いていき、ひらきにしたグチを身取り機にかけて身と皮を分けていきます。その身を袋に入れ、冷水にさらして手で絞っていきます。

「水を含んだ身はとても重く、本当に重労働ですが、それを繰り返すことで、生の魚の余分な油や血が洗い流されていくんです。」

続いて、絞った身に塩と調味料を加え、大理石の石臼で身をすった後、裏ごしして余分な筋を取り除いていきます。井上蒲鉾店では、塩・水・調味料の分量、石臼を回す時間など、当日の天候や魚の状態などを見て、その日その日に最も合う形にしているそうです。

「魚の身をさらし袋に入れ絞っているところは、今はほとんどないと思います。」

この井上蒲鉾店ならではのやり方は、昔から変わらない味を出すためには必要な工程となっているそうです。

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はんぺんの型どり

石臼ですり上げた身は、職人さんが木型と包丁を使い、一枚一枚手作業ではんぺんの型にとっていきます。

「さっきの工程もそうですが、機械で同じ味になるならそうしたいですが、いろいろ試してみても、やっぱり同じ味にはならないんですよね。」

まず、すり身の塊から包丁で適量をとり、まな板の上で左右に身を延ばし、すり身の繊維の方向を揃えていきます。それを左手に持つ木型に入れ、何度か木型の上で形を整えた後、水の中に落とす。

一連の流れはとてもスムーズに行われ、この工程の中から、手どりならではの絶妙な歯応えが作り出されていくそうで、最終的には、型どったはんぺんを表裏確かめて蒸した後、冷却されて完成となります。

職人さんの手際良いその手さばきに、思わずじっと目を奪われてしまっていると、

「ちょっとやってみますか?」

井上さんのお言葉に甘えて、実際に体験してみました。

 

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見た目以上の職人技

まず、包丁を持ってすり身をとろうとした時点で、見ているものと行われていることのギャップに気づかされます。包丁は想像以上に重量感があり、クリーミーに見えたすり身は思っているよりもずっと粘りが強いのです。職人さんが手際よく進める様子を見て、知らず知らずのうちに生クリームを扱うようなイメージで捉えていたようです。そのため、まな板の上ですり身の繊維を整えようとしても全く思うようにはできず、はんぺんを型にとるところまではたどり着けませんでした。

予想以上に力を必要としながら、生の身がいたまないような柔らかさ、テンポ、スピードも要求され、毎日長時間やり続けるのが本当に大変な作業であることは容易に伝わります。

また、実際に包丁を持たせていただいて気づいたことは、職人さんは、一つの動きの中で多くの繊細な作業を同時進行させているということです。

しっかりと空気を抜きつつ繊維を整えること、木型と身の間に隙間ができないようにすること、身の詰まり具合を確認しながら木型にとること、最後に表面をふわっと盛ることなど、井上独自の歯ごたえを出すためにはどれもが重要で、機械では再現できないまさに職人技といえるものでした。

 

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