コロカ事業

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北海道・むかわ町の本ししゃも

 

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北海道の味覚へ

10月初旬。東京よりも冷たい空気が、一足先に秋を感じさせる北海道の玄関口・新千歳空港。

新千歳空港駅より電車で一駅の南千歳駅から、苫小牧行きの電車に乗り換え20分弱。

北海道を代表する港湾都市の苫小牧駅に到着します。

ここから、JR日高本線を走る汽車に乗り換えて30分弱で今回の目的地・むかわ町に到着です。

駅舎を背に、まっすぐ伸びる道を最初の信号まで歩き、左に曲がり少し歩くと、カネダイ大野商店の看板が見えてきます。

店舗に近づくと、店舗前は一面シシャモのすだれ干しが、所狭しと並んでいます。

シシャモ漁が最盛期のこの時期は、昼過ぎにもかかわらず、絶え間なく訪れるお客さんがシシャモを購入していきます。

店内も同様に、購入したシシャモを早速焼いて食べ、この時期しか味わえないシシャモ料理に舌鼓をうつお客さんとで混雑しています。

急遽入ったテレビ取材と、混雑する店内の対応に追われつつも、爽やかな笑顔で出迎えてくれたのは、カネダイ大野商店・三代目社長の大野秀貴さんです。

早速、取材...と、意気込みましたが、テレビの取材が少し押しているようです。

お待ちさせていただく間、取材に先駆けてシシャモ寿司とシシャモ汁のセットをいただきました。

 

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旬のシシャモで

シシャモ寿司は、10月頭のシシャモ漁解禁と共に、カネダイ大野商店で提供開始されます。

11月後半までの約二ヶ月間限定の味・シシャモ寿司は、見た目は白身魚の味を思い起こさせますが、あっさりとした中にほのかな甘味を感じさせつつ、しっかりした歯ごたえも楽しめ、他の魚では例えがたい味わいです。

セットを頼むと供されるシシャモ汁は、北海道の郷土料理・三平汁に香ばしく焼いたシシャモを一本入れた、北海道の根菜とシシャモの風味が良く合った一品です。

そして、注目すべきなのは一見目立たない、香の物です。

秋口に出てくる北海道の漬物といえば、石狩地域で取れる通常お土産でコロ生ユーザーには有名なキャベツ「札幌大球」を使った、「ニシン漬け」です。

と思って、よくみるとニシン漬けにしては、ニシンが小さく、キャベツもロールキャベツのように丸まっています。

不思議に思いながら食べてみると、中心に巻き込まれている魚は、ニシンではなく、シシャモなのです。

この「シシャモ一本漬け」は、2010年に開催された北海道の漬物No.1を決める大会「T-1グランプリ」で、決勝の舞台に残り、優秀賞を受賞した漬物です。

メインのお寿司から、香の物にいたるまでシシャモづくしのセットは、味わいもお腹も満足するセットでした。

お腹もいっぱいになったところで、ちょうどテレビ取材が一段落した大野さんにお話をお伺いしました。

 

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鵡川とシシャモの物語

むかわ町は、町を流れる鵡川(むかわ)に由来した町名で、2006年に鵡川町と穂別町が合併し、むかわ町となりました。

北海道の地名に多いアイヌ語由来の地名で、いくつか説があります。

・ツルニンジンの群生するところ

・塞がる川

・水の湧くところ

それぞれ、アイヌ語の「ムカ」に由来するものです。

一方のシシャモですが、名前はよく聞き、食べる機会もそれなりにあるものの、どんな魚か知っている人は少ないのではないでしょうか。

鮭に代表されるような回遊魚で、4月〜5月に川で生まれた稚魚は、海へ下り1年半成長し、成魚となって産卵のために川へ遡上します。

雌のシシャモは、産卵後に再度海へ下り、翌年また川を遡上(そじょう)し産卵することもあるそうで、11〜14cm前後程度の成魚に混じって、16cmを超える大型の雌も獲れることがあるそうです。

名前の由来は鵡川同様にアイヌ語で、神が飢えに苦しむ人々を救うために流した「柳(スス)の葉(ハム)」が魚(ススハム=シシャモ)になったと言われています。

まさにむかわ町のシンボルとも言えるシシャモは、2006年のむかわ町の設立と共に町魚に制定されました。

 

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シシャモ一筋

カネダイ大野商店は2010年で創業88年を迎える、シシャモの加工ではむかわ町で一番長い歴史を持つお店です。

創業当時、大衆魚として取り扱われていたシシャモは、鵡川で漁をすれば誰にでも手に入れられる魚でしたが、初代・大野留吉(とめきち)さんはシシャモを加工して、商品として取り扱いはじめました。

むかわ町のシシャモ加工の特徴は、シシャモのイメージと言われると皆さんが思い浮かべるであろう、すだれ干しにあります。

そんなむかわ町のシシャモですが、実はシシャモの漁獲高で見るとむかわ町は全体の1割程度しかなく、白糠、広尾、日高など襟裳岬〜釧路周辺での水揚げが多いのです。

なぜシシャモ=むかわ町となったのか。

これはカネダイ大野商店に代表されるシシャモの加工業者が、昔からの技術に基づき発達していたためです。

一方で、現在のシシャモは北海道レッドデータブックと呼ばれる、保護の対象となる野生生物に分類されています。

地理的に鵡川付近〜襟裳岬〜釧路付近と非常に狭い範囲でしか生息が確認されておらず、乱獲による個体の現象も相まって、保護に留意すべき対象となっています。

昭和43年(1968年)には178トンもの水揚げがむかわ町だけでありましたが、平成2年にはわずか2トンまで減少してしまいました。

漁法の技術革新に伴う乱獲と、鵡川自体が氾濫しやすい川であったために、整備が進み遡上しにくい川になってしまったためでした。

漁獲高の減少する一方、大衆魚のイメージは依然としてついてまわっていました。

加工業者も年々減少し、高齢化していく一方でしたが、カネダイ大野商店はそれでもシシャモにこだわり続けました。

そのこだわりは、加工業を続けるだけではなく、シシャモをお客さんに知っていたくことへも同時に発展して行くのでした。

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