Y 僕は「こんなビジュアルを作りたいんだけど、どんなふうにデータを作るといいのかな」と相談を受けてツールやデータを作ることもありますし、デザイナーが使っているDCCツールの使い方を工夫することでデータを作りやすくしたり、自動化するためのルールを検討したりしています。要するに、デザイナーのワークフローとパイプラインの整備ということになりますね。
「ワークフロー」と「パイプライン」の違いを教えていただけますか。
Y ざっくり言うと、「ワークフロー」は実際に現場で行われる作業フローのことで、その中でデザイナーの画力が発揮されます。「パイプライン」はワークフローの様々な箇所で利用されるツールなどをまとめたもので、ツール間でのデータの受け渡し等も含めて仕組み化したものです。できるだけ全社展開できるように作ってはいますが、最適な作り方はプロジェクトごとにあるので、そのときは専用に作ります。
T スキルというのかわかりませんけど、まず現場での経験があって、現場の意見や問題点を吸い上げられる力は必須だと思います。デザイナーにはいつもやりたい表現がたくさんあるんですが、技術的な制約でできないこともたくさんあるんですよ。だからTAには、デザイナーが困っていること、欲しいと思っているものに気づいたり耳を傾けたりできる力が最低限必要になってくると思います。
T やっぱり、自分が本当に作りたいビジュアルを作るための機能拡張を自分でできることじゃないですか。それによって最終出力が変わってビジュアルに反映されると嬉しいですよね。
Y あと効率化の面で言えば、たとえばそれまで1日掛けなければいけなかった作業が5分でできるようになると、残りの時間をビジュアル制作に当ててもらうことができます。そうやってビジュアルが良くなる過程が直接見えるのはやりがいと言えると思います。
T わかります。やっぱりデザイナーは、"ビジュアルを作る以外の単純労働をなくしたい" という思いが強くて、作るほうに集中できるようにしたいんですよね。私もある作業をシステム化したところ、データを放り込むだけで作業が完結するようになったんですよ。それによってヒューマンエラーもなくなり、最低限のチェックで済むようになったので、クオリティやボリュームに集中することができるようになりましたね。
Y 業務効率化の土台が整っていないことで、デザイナーがビジュアル制作に集中できないって、ツライですよね。
T はい。でも現場って何かと忙しいので、"この作業ってもっと効率化できるんじゃないかな" と思っても、"そんな仕組みを作っている暇はない。とにかく作らないと" という感じになってしまうことがあると思うんです。
Y それで結局、あとで修復しないといけない箇所が蓄積してしまうんですよね。でもワークフローや、特にパイプラインを整えるのは本来デザイナーの得意分野ではないことも多いので、仕方ない面もあると思います。