テクニカルアーティスト徹底解説【前編】 - コロプラが考えるテクニカルアーティスト像とは?
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全社横断テクニカルアーティスト
Y
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『白猫テニス』 3DCGデザイナー
T
コロプラでは今、 "テクニカルアーティスト" の組織を立ち上げ中で、さらなる仲間を募集しています。
この職種名を聞いてゲーム業界の方がイメージするのは、
◆ エンジニアとデザイナーの橋渡しをする
◆ 技術的なアプローチから業務効率化に貢献する
◆ 最新技術に詳しく、それを導入する
といった業務内容ではないでしょうか。
でもコロプラのテクニカルアーティストが目指しているのは、"ビジュアル制作のためのインフラ" とのこと。この言葉の真意を探るべく、今回は長年コンシューマーゲーム会社で活躍し、テクニカルアーティストとして入社したYさんと、3DCGデザイナーのTさんに「テクニカルアーティストとは」というところから「コロプラのテクニカルアーティストに絶対必要なスキル」まで、聞いてきました。
今、コロプラで "ビジュアル制作のためのインフラ" 的存在が求められる理由とは?
TAの定義は実に曖昧なもの!?
コロプラが求めるTAとは
今回はテクニカルアーティスト(以下、TA)のお仕事についてお聞きしたいと思いますが、まずはコロプラに入社されるまでの経歴を簡単に教えていただけますか。
T 私は2001年にゲーム系の専門学校を卒業しまして、コンシューマーゲーム会社に入社して以来、ずっとゲーム業界で働いています。前職までの間にドット絵から始まり、エフェクト、3D背景など様々なものに携わってきました。その後スマホゲーム部門の立ち上げにも関わらせていただき、コロプラには2年前に入社しました。今は『白猫テニス』の3DCG制作をメインにやっています。
Y 僕は理工系の大学院を出て、2010年にコンシューマーゲーム会社にエンジニアとして入社しました。グラフィックス関連の技術サポートやデザイン制作フローの構築、スマホゲーム制作の基盤整備などを経験したのち、半年ほど前にコロプラに転職してきました。
コロプラでは今、テクニカルアーティストの組織を立ち上げ中だと聞いています。
Y はい、その通りなんですが......ちょっと業務内容をイメージしづらい職種かなと思ったので、いつも一緒に仕事をしているTさんと話すことで整理できればと思いました。
T Yさんが入社されたとき、「TAが入社したから、打ち合わせに参加するように」と上司に言われたのは、私が現場でデザイン業務をしながら(TAがいたら解決するようなことを)いろいろと相談していたからだと思います。
Y そうだったんですね(笑)。
T はい、それで今はYさんにいろいろ相談しているわけで(笑)。でもTAって、そもそも「一般的なTAとは」と言い切るのが難しい職種ですよね。
「一般的なTAとは」と言い切るのが難しい......とは?
Y 15年くらい前に生まれた職種なんですけど、まだ業界内で「TAとは」という定義が曖昧な部分も多くて、会社によって業務内容、業務領域が結構違うんです。「当社のTAは」という言い方になるというか......。
T でも定義がはっきりしないと、よくわからない話になっちゃいそうですよね。まず "定義" ではなく、"一般的な印象" について話しましょうか。
Y それでいくと、よく言われるのは「技術系の話ができる、スクリプトやツールを作るのが得意なデザイナー」といったところでしょうか。でもデザイナーに本当に必要なのは、技術ではなくビジュアルを作れることですし、技術周りのことはエンジニアのほうが得意ですよね。
あの、「TA」って詰まるところデザイナーなんでしょうか。Yさんはエンジニア出身ですよね?
T デザイナー出身者が多いのはたしかですが、Yさんのようにエンジニア出身のTAもいます。デザイナー出身者が多いのは、DCCツール(Autodesk MayaやAdobe Photoshopなど)を使う開発現場で必要とされたプラグインやスクリプトをデザイナーたちが作って、TAという職域を開拓してきた歴史があるからですね。
Y その主な目的は絵作りの効率化や最適化にあると思うんですけど、コロプラのTAに求められるのも、あくまでビジュアルをより良くすることにあるんですよね。定型業務の改善に長けたエンジニアなどは他の部門にもいるわけで、TAは彼らとも協力しながらビジュアル制作の最適化を考える立ち位置にあります。作りたいビジュアルのゴールを決めた上で、それを実現するための方法を考えたり、足りないものを補いながら形にしていくのが僕らの仕事です。
T まさにそこですよね。重要なのは、"最終的にどんなビジュアルを作れるようになるか" というアート側の視点なんです。かつそのビジュアルを "今このゲームに載せるものとして相応しいか" ジャッジする力も求められていると思います。
テクニカルアーティストは、
たとえるならバイリンガルに近い?
エンジニア出身でもアート側の視点を持っている必要がある......と。
Y それで言うと、僕は社会人3年目のとき3DCGの専門学校に通っていたんです。平日は会社が終わってから自習室に行ったり、自宅で寝るまで課題や自主制作をやったりして土曜日は授業......ということを1年間やっていました。
T そうなんですか、全然知りませんでした。しかし社会人3年目ということは、エンジニアとしてバリバリ働いている時期ですよね。なぜ行こうと思われたんですか。
Y 実は学生時代にイラストを描いていて、本当はゲームの3DCGデザイナーになりたかったんですよ。でも "美大や専門学校の人たちには勝てないな" と思うことがあって、エンジニアに転向してゲーム会社に入ったという経緯がありまして......一度3DCG制作のことを基礎から学んでみたかったんです。
T 転職の合間に通う方とかはいますけど、結構ハードだったんじゃないですか。
Y はい、要は休みがほぼないことになりますので、かなりキツかったです。決してオススメはできません(笑)。で、1年間やってみて、"どう考えても自分がバリューを出せるのはそこじゃない" とわかったんです。また、ちょうどその頃エンジニアからTAにキャリアチェンジしたこともあって、"あわよくばデザイナーに......" ということは考えなくなりました(笑)。
T そんな経緯もあって、デザイナーがやりたいことがわかる、エンジニア出身のTAが誕生したんですね。
「デザイナーがやりたいことがわかる、エンジニア出身の」とは意味深ですね。
Y 結局、エンジニアとデザイナーってバックボーンが全然違うので、普通に話すだけでは話が全く噛み合わないということがあるんですよね。
T そうなんですよ。エンジニアもデザイナーもお互い技術は持っているんですけど、文化や言語が違うので......どうにも話が噛み合わないときがあります(笑)。たとえば私もやりたい表現があって、エンジニアのところに「あのー、こんなふうにしたいんですけど......」と相談に行くと、「具体的に何がしたいのかよくわからない......」と言われたりします(笑)。お互い "面白いゲームを作りたい" という気持ちは同じなんですけど、なかなか思うように伝わらないのがツライところでして。
Y (笑)。お互いの専門用語が違うので仕方ないですよね。だから僕は、エンジニア、デザイナーと話すときはそれぞれ話し方を変えていますし、デザイナーがやりたいことを的確にエンジニアに伝えるための調整役のようなこともしています。
T それで言うと、2Dと3Dでも用語や作り方が微妙に違ったりしますよね。
Y 違いますね。用語もそうですが、微妙なニュアンスも相手に合わせて変える必要がありますし......とにかく "相手に合わせて" が肝なんですね。それによって個々のクリエイターが持っている力を最大限引き出して、両者を最大限スマートに繋げられるようにしたいと思っています。
究極のコミュニケーション能力が必要というか、たとえるならバイリンガルみたいな感じでしょうか。
T そのたとえは近いと思います。デザイナーが目指しているものは、言葉にすると漠然としていることが多いんですが、目標としているビジュアルのイメージをエンジニアと共有できないと話が進まないんですよ。デザイナーは基本的に、やりたいことを抽象的な言葉で伝えるものなんですけど、エンジニアにとっては「それは結局、どうしたいの(僕がすべき作業を簡潔に教えて)」となっちゃうんですよね。
Y あと大事なのが、"そのシステムの改善で、実際にビジュアルがどうなるのか" という視点です。たとえばエンジニア側から効率化の提案があるとして、単純にデータ容量を減らせばゲームが軽くなるのはわかるんだけど、ビジュアルとしての綺麗さが損なわれてしまうとしたら、それはデザイナー側からすると喜ばしいことではない。効率化って、ときにビジュアルのクオリティを犠牲にしてしまうこともあるので、それを誰に向けたどんな提案に落とし込むべきかを判断する必要があります。
<「【後編】- 現在の業務内容と、TAに絶対必要なスキルとは - 」に続きます>