コロカ事業

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長野・千曲の杏もなか


 

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新たなおいしさを求めて

杏花堂では、定番商品だけでなく、新商品の開発も行っています。

昨年発売したあんず紅茶は、干し杏を包丁で細かく切って国産紅茶とブレンドし、ティーバックにして販売しています。手で切ったものがいちばん香りがよく、風味が豊かだったので、大変でも手作業で刻んでいます。杏の風味を取り出すためには少し長めに蒸らすのがポイントですが、渋味が少ない国産紅茶を採用することで、じっくり蒸らせるように工夫されています。

「杏アイス」は、手作りジェラードのお店に協力してもらい、杏ジャムと県内の良質な牛乳を使って作られた夏の人気商品です。この冬には、あんずをホワイトチョコレートでコーティングしたお菓子も販売予定だそう。杏ひとつで、これだけバリエーション豊かな味が楽しめるのかと、驚いてしまいます。

 

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受け継がれる家族の味

じつは令子さんが店を継ぐと言ったとき、ご両親は大反対したそうです。

「すごく苦労していましたからね。やらせたくなかったみたいです。でも、私は東京でも販売の仕事をしていたし、もともとこういう商売が好きだったんですよね。だからやりたいと思ったし、やってこられたのかなと思います」

「大反対だったけれど、このコが継いでくれたおかげで、お父さんとあちこち旅行にも行かせてもらいました。それに、人を雇うのも大変だから、今も手伝ってるの。この年まで働けるって本当に幸せなことよ。だからね、今では感謝してますよ」と話してくださったのは、令子さんのお母さん、照子さん。

親から子へと受け継がれてきた手作りの味。新しさの中にもほっとする優しさがあるのは、家族の温かさから生まれた和菓子だからなのかもしれません。

 

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何十年も愛される商品を

「いちばんの目標は、この先、何十年も食べ続けてもらえる商品を作っていくことです。息子たちが継いでくれるのかどうかはわからないけれど、こういう仕事は"やりたい"っていう気もちがないと続かないと思うから、無理に継がせようとは思いません。でもわたしたちが元気なうちは、お店は続けていきたいですね」

また、後継者不足などの問題から、今後、杏農家が減ってしまうのではないかという懸念もあり、地域では杏の文化を残していこうという動きもあります。令子さんは、杏菓子を作ることで、その手助けができればと考えています。

"やりたい"という気もちと地元の文化を思う気もちから生まれるこだわりの杏菓子は、きっと何十年先も、変わらぬおいしさを届けてくれるに違いありません。

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