コロカ事業
箱根の寄木細工
- 店舗レポート
天然木から生まれる模様
並べられた原材料になる木は、その天然の色がとてもカラフル。褐色のけやき神代、黄色のにがきやうるし、白っぽい色のあおはだやみずきなど、人工的に色をつけたわけではないのに、彩り豊かな木が並びます。
もともと箱根には様々な種類の木が生息していて、その色の違いを生かした模様づくりが可能だったのです。国立公園に指定を受けた今は、箱根の木を伐ることはできないため、原材料は、日本全国や海外から仕入れているのだそう。
こうした様々な色の木の板を重ねてカットして組み合わせていくのです。
木を寄せてつくる模様
さっそく、寄木細工のつくり方を教えてもらいます。
細長い木のピースを模様ができるように組み合わせて、木工ボンドで接着していきます。初期の頃はボンドの代わりに米粒を、その後はニカワ(動物の皮や骨などから作られる接着剤)を使っていました。この時、組み合わせに少しでもズレがあると幾何学模様にゆがみが出るので、木の側面を均一にするのが腕の要るところ。
こうしてできるのが、単位となる模様です。この細長い木材を、金太郎飴のように数cmにカットして横につなぎ合わせると、幾何学模様が広がっていきます。この作業を繰り返してできる大きな模様材が、種木(たねぎ)です。
ここで、いよいよ箱根寄木の原点ともいえる技術の出番です。種木の模様の面を、なんと鉋(かんな)にかけて、0.1~0.2ミリほどの薄い木のシートをつくるのです。
薄く削る技法「ズク」
この鉋から出る紙のようなシートを「ズク」と呼びます。
ズクを木の箱などに貼って、飾り模様としたのが、寄木細工の原点。ここまでの技術を一人前にこなせるようになるには、最低10年はかかるのだとか。
この薄く削った「ズク」が、箱根の寄木細工の最大の特徴、と石川さんは言います。
ズクを使わず、種木を直接轆轤(ろくろ)にかけてお盆やお皿をつくる「無垢」と呼ばれる手法もありますが、こちらの方が歴史も浅く、戦後できたものなのだとか。ひとつの種木からできる製品が一点のみなので、どうしても高価になってしまいます。それに比べて、ズクは1cmの種木を削って60枚は取れるため、量産が可能で、価格も「無垢」に比べると比較的安めに抑えることができます。