クイズゲームクリエイターにインタビュー!
「プランナーに求められること」「クイズゲームの面白さ」とは
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エンターテインメント本部Cスタジオ第1グループ
プランナー濱野 隆
前職でプランナーやプロデューサーを経験する中で、有名クイズゲームを開発。長年に渡りアーケードゲームやモバイルゲームに携わり、コロプラには2024年6月に入社。現在は新規案件および『ドラゴンクエストウォーク』(以下、『DQウォーク』)のプランナーを担当している。
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エンターテインメント本部B1スタジオ第1グループ
マネージャー補佐 プランナー川田 笙
2018年コロプラに新卒入社。入社直後から現在まで『クイズRPG 魔法使いと黒猫のウィズ』(以下、『黒ウィズ』)に携わり、2022年からディレクターを務める。
2013年にサービスが開始した『黒ウィズ』は、今年2024年に11周年を迎えた長寿スマートフォン向けゲームです。
本記事では、プランナーを志望される学生の方に向けて『黒ウィズ』の現ディレクターと、かつて有名クイズアーケードゲームを手掛けた人物にインタビュー。コロプラのプランナーに求められる条件やこの職種ならではのやりがい、そしてクイズゲームの面白さとは何かについて語っていただきました。
まずは経歴、自己紹介をお願いします。
濱野 プランナーの濱野です。1991年にコナミ社に入社し、デザイナーやプランナー、ディレクターやプロデューサーなどを長年担当し、音楽ゲームやクイズゲーム、シューティングゲームなどを手掛けました。2017年にタイトー社に転職し、ゲーム部門の部長職としてアーケードゲームやモバイルゲームのリリースに携わりました。2024年6月からコロプラに転職し、現在新規案件および『DQウォーク』の企画職を担当しています。
川田 『黒ウィズ』で現在ディレクターを務めている川田です。2018年に新卒でコロプラに入社してからずっと『黒ウィズ』に携わりつづけていて、9周年を迎えたタイミングの2022年にディレクターとなりました。ゲームは子どものころから大好きで、家庭用のRPGにハマり、ゲームセンターにもよく通っていました。
濱野さんがコナミ時代に手掛けられたクイズゲームはアーケード向けでしたが、『黒ウィズ』がスマートフォンで2013年にリリースされた当初、お二人はどのように感じていましたか?
濱野 私の手掛けたクイズゲームはいわば"ガチ志向"で、とにかく「クイズで対戦する」という遊びに特化していました。当時はそれが普通でしたが、『黒ウィズ』はひとりで遊ぶRPGと融合したのが斬新でした。こうした切り口で新たなクイズゲームが出てきたのは衝撃で、正直「やられた!」と思いました。私がそれまで経験してきた成功体験とは少し違う世界な感じがして、我々では思いつかなかっただろうな、と。
川田 僕は当時学生でしたが、『黒ウィズ』は斬新な切り口だと感じていました。2013年ごろはライトなコアアクションにカード編成要素を組み合わせたゲームが多かったので、クイズという目の付け所に驚きました。
以前、当時のディレクターから伺った話なのですが、作り手側の視点では「クイズはみんな大好きだし、RPGというジャンルも人気がある。じゃあ、それを掛け合わせたらみんな夢中になるはず!」という発想があったと聞いています。おそらく、濱野さんの手掛けたクイズゲームも、かなり参考にしていたと思います。
濱野さんは、そもそもどうしてクイズゲームを作ろうと考えたのでしょうか?
濱野 私がクイズゲームをリリースした当時、ゲームセンターでは格闘ゲームが流行していて、恋人や家族と一緒に遊べるゲームが少なかったんです。そこで、「腕前を問わずに、ファミリーやカップルなど数多くのユーザーさまに遊んでもらえるジャンルは何だろう?」と考えました。そこで当時クイズ系のバラエティ番組が流行っていたことから、クイズなら誰でも楽しめるだろうと考えました。
クイズの問題をジャンル分けしたのもポイントでした。アニメやゲームが得意な人が芸能やファッションが得意な友達を連れてきて協力し合うこともできますし、彼氏が得意なジャンルをサクサク解いて彼女にカッコいいところを見せる......なんてことも起きたのではないでしょうか(笑)。
川田さんから見て、濱野さんのクイズゲームがすごかったところはどこだったと思いますか?
川田 「〇〇ですが......」と続く分岐問題だとか、線を繋いで答える問題だとか、問題や回答の形式のアイデアが豊富だと感じていました。問題のジャンルだけでも幅広いものが作れるのに、クイズの形式にバリエーションを持たせることで無数にコンテンツが作れるのがすごいところだと思います。正直『黒ウィズ』でも、クイズ形式は参考にしています。
対戦も熱い作品でしたが、プレイヤー間での腕前の差はどのように埋めていたのでしょうか?
濱野 ある程度しっかり遊んでいるプレイヤーと、はじめて遊んだプレイヤーでは差が生じてしまうので、階級(ランク)制を導入しました。こちらも当時流行していた映画をベースに魔法学校的な世界観と組み合わせて、だんだんと知識が身につくことで修練生から賢者に成り上がっていくという流れは相性が良かったですね。
魔法ファンタジー的な世界観は『黒ウィズ』にも通ずるところがありますよね。
川田 そうですね。ゲームを作るとき、まずシステムやコアの体験から考えることが多いと思うのですが、ダイレクトに届けると「ユーザーさまにとってわかりにくいもの」になってしまいます。そこで何かをモチーフにして「わかりやすい形で届ける」必要があると思うのですが、やはりクイズと魔法や学園モノはかなり相性が良いと思いますね。
濱野 どちらのゲームも、やはりライト層を夢中にさせるという目標があったと思います。長いチュートリアルや物語を読ませるとすぐ離脱してしまうので、遊びながら魅了されるような「必然性のある世界観が必要」ですよね。
クイズゲームは比較的シンプルなゲームデザインのジャンルですが、運営型のエンターテイメントとして昇華させるにあたって意識していることはありますか?
川田 クイズゲームの良いところは、小さな成功体験をたくさん積むという気持ちよさがひとつの要素だけで得られるところにあると思っています。そういった特性を考えつつ、何か相性が良い組み合わせはないかというのは常に考えています。
『黒ウィズ』はイベントごとに小規模なRPGの世界観を0から築き上げるような作り方をしていて、イベント専用のシステムを組んでみたりと、いろいろ工夫しています。
濱野さんもコンテンツのバリエーションはかなり工夫されたのでしょうか?
濱野 そうですね。クイズは1問1問が短くコンテンツの消費スピードが早いので、先ほど川田さんが仰っていたように出題の仕方を変えてみたり、回答形式も○×からタイピングまで幅をつけてみたりと工夫を重ねました。
当時「検定ブーム」があったのですが、ジャンルを細かく絞ったモードを用意したのもポイントですね。特定のジャンルは「誰にも負けない!」と心を燃やす要素になりました。時流に合わせて新たなコンテンツが提供できるため、何度噛んでも味がするような深みを作ることができるので、プランナーの腕の見せ所だと思いますね。
クイズゲームは多数の問題を用意しなければならないと思いますが、大量のコンテンツを作るにあたって苦労することはあるのでしょうか?
濱野 シリーズ当初は私が5,000問くらい作りました(笑)。問題文と選択肢、そしてエビデンスに基づいた回答を毎日考えていましたね。途中からはTV番組にも提供しているクイズ問題作りのプロ集団の方々にお願いすることで、難易度の比率や問題文の作り方など安定したクオリティのものを制作できるようになりました。
川田 自分たちでクオリティが高い問題を制作するのは大変ですからね......!
川田さんも作っていらっしゃるんですか?
川田 『黒ウィズ』では基本ジャンル以外に季節限定のジャンルも用意することがあるので、自分たちの引き出しにないジャンルもあるので色々と下調べが必要ですし、しっかりチェックしながら地道に作っています。
濱野 私もボリュームとクオリティを揃えることには苦労しました。アニメ・ゲームの問題は無限に作れるのですが、歴史の問題は限りがあるので増やすのが難しいです。しかも「野球選手の年間ホームラン数」というようなデータや数字を当てるだけのクイズはあまり面白くないので、クオリティとボリュームのバランスをジャンルごとにそろえるのが大変です。
「アメリカ合衆国の大統領といえば?」というように問題の内容が時事で変わるものもあるので、いかにスピーディーに変更できるかは、運営上で重要なことのひとつでした。
ちょうど良い難易度を作るのも難しそうです。
川田 『黒ウィズ』ではユーザーさまの正答率によって自動的に難易度を振り分けるようなシステムを用意しています。正答率が低いものがあれば、難しい問題を出す場面で使われるように変わるという感じです。
ただゲームシステム上、クイズに回答することがRPGにおける操作コマンドのようなものになっているので、問題文や解答欄を見て、答えをイメージできるような作りにしています。競技性や知識を重視していないので、ここは濱野さんと違う考え方かもしれないですね。
根本的な質問になるのですが、そもそも「クイズゲームの面白さ」はどこにあると思いますか?
濱野 プランニングの視点から言うと、いろいろな料理の仕方があるという点が面白いと思います。RPG的にするもよし、パズルと組み合わせるのもよし......と、柔軟性があるジャンルなんです。私はとにかく対戦を重視して、多人数バトルを勝ち上がっていくというアスリート的な感覚を追い求めました。
開発時には結果発表の場面から最初に作ったのですが、それは2位以下になった人をいかに悔しがらせて「もう1回!」とさせるかを重視していました。クイズバトルのTV番組に出演しているような体験が味わえたのではないでしょうか。
アーケードゲーム、ゲームセンターにフィットする思想ですね。一方、スマートフォンを舞台とする川田さんはいかがでしょう。
川田 プランナーとしては、無限に出てくるアイデアを組み込みやすいところが面白いですね。いろんなジャンルと組み合わせられるのもそうですし、小さな成功体験を細かく体験できるのが良いところです。
『黒ウィズ』に関しては、やはりRPGと組み合わせたのがひとつ大きな面白さで、クイズにどんどん答えると戦闘が有利になるという体験は普通のRPGにはないですよね。そういった体験の特異性というのは本作の良いところだと感じます。
今のクイズゲームシーンを見てみると、いくつか作品は出つつも、濱野さんが手掛けた作品のシリーズと『黒ウィズ』の二大巨頭という印象があります。こうした状況になっているのはなぜだと思いますか?
濱野 両作とも、やはりジャンル内でのパイオニア的な側面が大きいのではないでしょうか。その上で、キャラクター独自の掛け合いや世界観の強化などを行い、ユーザーさまに愛される要素をしっかり用意できたというところにあると思います。
川田 『黒ウィズ』も最初はクイズ重視だったのですが、徐々にキャラクターの個性やカード編成要素を強めていって、根強いファンの皆さまがついてくれたというところがありますね。
プランナーという職種についてお伺いします。まず、この職種はどういったタイプの人が向いていると思いますか?
濱野 好奇心が旺盛な人や、つまみ食いをいっぱいする人でしょうか。ひとつのものではなくいろいろなことに興味を持って体験できる人は、おのずとプランナーとしての引き出しも多くなっていきます。今どきはネットで検索できてしまいますが、実体験は空気感やコミュニケーションなどでダイレクトに感じられますから。
ただ、もちろん最初からいろいろな情報を知っている必要はありません。そういった意識をもつだけでも、プランナーとしての力が身につくと思います。
川田 プランナーに向いている人は、"作り手の目線"を持てる人ですね。もちろん遊び手としての面白さを考えるのも大事ですが、ゲームを遊んで「これはどう作っているんだろう?」「どうやって考えついたんだろう?」と考えを巡らせられる人には、プランナーやゲームづくりにかかわる職業をぜひおすすめしたいです。
ただ、プランナーとして伸びる人はまた別で、"素直になれる人"だと思います。あらゆるゲームを偏見なく触って吸収し、あらゆるものにどんどん挑戦できる人は伸びる人だと思います。
新しいものに興味を持つことが大事なんですね。皆さんは働き方や意識してきたことはありますか?
濱野 私は「新しいもの好き」で長年頑張ってきましたね。興味が広いことを社内でもアピールしていたことでいち早く情報が掴めたり、いろいろなとこに連れて行ってもらえたりするチャンスをたくさんいただいてました。
やりたいことを口に出して発信しつづけるのは本当に大事で、「じゃあ頼んでみようかな」というきっかけにも繋がります。
川田 僕の場合は、ちょっと変な話になるのですが「人格を入れ替える」ことを意識しています。
と言いますと?
川田 ひとつの企画を見たときに、ゲーム好きの人はどう感じるか、まったく知らない人からはどう映るか......という感じで、いろんな立場の人格になって物事を見ているんです。
RPGを遊んでいるとき、イラストを見ているとき、企画アイデアを見たときなど、いろんな場面でそれが好きな自分と大嫌いな人格とで話し合いをよくしています(笑)。
あ、あともう1点。他の人の意見を聞いて折れない心と、「ここだけは譲れん!」という精神の強さも必要かもしれないです。
濱野 プランナーは1日かけて「絶対面白い!」と思える企画を提案しているので、否定されるのがすごく怖い職種なんです。
ただ、そこでしっかりいろいろな視点からレビューできるようになることで、感覚のアップデートやリベンジがしやすくなりますね。
プランナーという仕事のやりがいはどこにあると思いますか?
濱野 自分の好きなことやこだわりに遊びを加えてユーザーさまに体験してもらえるというところですね。運営型であれば実際にリリースしてから運営するところまで長く関われますし、責任が大きい分成功体験としても、非常に大きなものが得られると思います。
川田 ユーザーさまを感動させられるところかなと思います。「楽しい」という気持ちも感動から生み出されるものだと思っていて、手に取っていただいたユーザーさまから感動したというお声をいただけると、プランナーとしてすごくやりがいを感じます。
コロプラのプランナーに求められる考え方はあるのでしょうか?
川田 コロプラでは「最新のテクノロジーと、独創的なアイデアで"新しい体験"を届ける」というビジョンを掲げています。すでに世に出ているものをそのまま切り出すということはしないので、そこに対してアンテナを張ることは必須だと思います。
現在『黒ウィズ』の開発チームでは、いろいろなことにチャレンジできるのでしょうか?
川田 新しいチャレンジがしやすいチームだと思っています。世界観からキャラメイク、背景からBGMとRPGを構成する要素すべてに関われますし、そこからクイズと掛け算して新たなコンテンツも作れるので、プランナーとしてはかなり挑戦できます。
プランナー同士のディスカッションも活発に行える環境で、突拍子もないアイデアでも絶対に一度は議題に上げて判断するんです。もちろんロジカルに考えることは大事なのですが、どんなアイデアでも「それはないでしょ」と蹴ることはないです。
近年ではNFTやAIなどの技術が発展を見せていますが、こういった新技術への挑戦もできるのでしょうか?
川田 AIは会社としてもまだ模索中なのですが、一部業務においては活用している部分もありますし、取り組めるきっかけはあるのではないかなと思います。
最後に、コロプラのプランナーを志望する方に向けて、メッセージをお願いします。
川田 大きな新企画から、イベント運用中の構築という小さなところまで、とにかく新しさを求めるというのがコロプラの良いところだと思います。ぜひワクワクした感情やチャレンジングな精神を持ってきて、思う存分やりたいことを発信していってください!
また、クイズゲームで新しい体験を作りたい人は是非!
濱野 私がコロプラに入社した理由は、パイオニアを目指す、"祖"になるというモットーに惹かれたからです。既存の運営タイトルの企画から新規プロジェクトの立ち上げまで、プランナーとして力を発揮できるステージはすべて揃っていて、とてもやりがいのある会社だと思います。