コロプラの権利を護り、
事業に貢献する知財グループのミッションとは
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取締役 法務知財部 部長
山崎 聡士
法学部卒業後、半導体の商社に営業職として入社後、法務へ異動となり、以降は一貫して法務に従事。以後、システム開発会社、DRAMメーカーを経て、大手電子機器メーカーに14年間在籍し、法務部の部長を務めた。コロプラには2020年に入社し、現在は取締役を務める。
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法務知財部 知財グループ
マネージャー山際 将史
政治経済学部卒業後、遊技機メーカーの知財業務に14年間携わる。2020年にコロプラに入社。2022年7月に知財グループのマネージャーに就任。現在は特許チームと知財戦略チームの統括を務める。
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法務知財部 知財グループ
マネージャー補佐國府田 隆介
経営学部卒業後、遊技機メーカーの知財業務に16年間携わる。前職在職中に弁理士試験に合格し知見を活かして知財部のマネージャーを務めた。2022年にコロプラに入社。現在は知財グループのマネージャー補佐を務める。
コロプラは「最新のテクノロジーと、独創的なアイデアで"新しい体験"を届ける」というビジョンを掲げています。このビジョンの実現に大きく関わってくるのが、独自のアイデアや技術の特許を取得することでコロプラの権利を護る知財のお仕事です。
ゲーム業界において知財の保護と活用は、年々その重要性を増しています。2023年9月、知財グループでは新たに"知財戦略チーム"を立ち上げ、未来を見据えた知財戦略の強化を進めています。そこで求められるコロプラの知財戦略の考え方と知財グループが目指すことをお聞きしました。
- INDEX
- 【1】コロプラの権利を護る、知財グループの役割とは
- 【2】二人一組で業務を担当するバディ制の強み
- 【3】ゲーム業界における「知財戦略」の重要性とは
- 【4】コロプラの知財業務で求められる経験や素養は?
コロプラの権利を護る、知財グループの役割とは
まずはコロプラの知財グループの組織体制と、みなさんの役割を教えてください。
山崎 私が部長を務める法務知財部の中には、「法務グループ」と「知財グループ」があります。さらに知財グループは、「特許チーム」と「知財戦略チーム」の二つに分かれています。山際は知財グループのマネージャーとして両チームを統括し、國府田は知財戦略チームのリーダー的な役割を務めています。
別チームとして完全な分業制になっているわけではなく、知財戦略チームのメンバーであっても必要に応じて特許関連の仕事をしますし、逆もまた然りです。いろいろな業務をこなす"何でも屋"のようになると、どこに軸足を置くべきかわからなくなるため、それぞれのチームに所属することで業務に濃淡をつけるようにしています。
「特許チーム」と「知財戦略チーム」は、どんな業務の分け方になりますか?
山崎 知財業務には大きく分けて三つの機能があります。
一つ目は自社のアイデアや技術を権利化して護っていく機能、二つ目は他社の権利に抵触していないかを調査し、回避する機能です。そして三つ目が、会社の事業戦略と連携して知財の戦略を練るという機能です。もともと知財グループとしてこれら三つの機能を担っていましたが、知財戦略を強化したいという背景があり、一つ目と二つ目は表裏一体のものなので主に「特許チーム」が担当し、三つ目については「知財戦略チーム」で専門的に担当するようにしました。
山際 私は両チームを統括していますが、知財戦略チームについては、マネージャー補佐の國府田に任せ、私は主に特許チームの業務を見ています。そのため権利の抵触調査と特許出願の業務のウエイトが大きいですね。
國府田 現在、知財戦略チームでは、自社と他社の特許の出願動向における"見える化"を進めています。そのデータを元にコロプラの事業に連携した知財戦略を練っていきます。
例えば、他社の出願動向を見ると、「この分野に注力している」ということがある程度、分析できます。それに対してコロプラがどういった特許を取得するかを考えたり、知財の利活用を考えていきます。コロプラの強みと弱みを把握するためにも、その礎となる特許の出願動向のデータ整備が重要になってくるのです。
特許出願を進めるには、コロプラの事業や技術を正確に把握する必要があると思うのですが、どのように理解を深めていますか?
山際 そうですね、プランナーと話すことが最初の入口になります。まずゲームの仕様についてプランナーから話を聞き、技術的な面で確認したいことがあれば、エンジニアに聞くという流れですね。
國府田 コロプラの特許は特殊なプログラムや新技術というより、面白いユーザー体験を届けるためのゲームシステムや新たな機能に関するものが多いです。
そのためゲームの仕様を考えるプランナーと話すことが多く、それがかつてないゲームシステムだった場合、技術的な要素も関わってきますから、エンジニアに詳しく話を聞いて特許出願を進めていきます。
「知財戦略を強化していきたい」ということですが、知財戦略の考え方を教えてください。
山崎 まず知財グループでは、「知財経営」の実現を推進しています。知財を使って会社の競争力を確保・維持し、強化する経営手法のことですが、そこには「事業戦略・研究開発戦略・知財戦略」の三つの要素があります。
私たちが担っているのは知財戦略ですが、常に事業戦略と研究開発戦略の両方と連携していく必要があります。事業や研究開発の方向性に合わせて特許を出願していかないと、無駄な知財を生むだけです。これらが三位一体で機能して初めて知財経営が実現できると考えています。
コロプラの事業に関係のない特許を取っても意味がない、ということですよね?
山崎 事業と関係なくても特許は取得できますから、手当たり次第に出願することも可能です。しかし、たくさん特許を持っていると知財に強い会社に見えるかもしれませんが、必ずしもそれが事業に貢献しているとは限りません。もちろん面白そうなアイデアであれば、直接的な事業貢献とは関係なく、知財が先行して特許出願することもありますが、その場合であっても、将来、自社での事業化が想定できることが前提になります。
そこで重要になるのが、自社と他社の知財力の"見える化"になります。他社との比較から自社の強みと弱みを分析できれば、どの分野の権利化に注力すべきか、自社のどういった事業が知財的に競争優位性があるのか、などが判断しやすくなります。そういった知財分析を背景として初めて知財経営を実現することが可能となり、コロプラの事業に貢献できるわけです。
二人一組で業務を担当するバディ制の強み
知財グループでは、どのようなチームづくりを目指していますか?
山際 知財グループでは、二人一組のバディ制をとっています。一人でも知財業務はできますが、そうすると個人の力量に大きく関わってきます。しかし、二人一組なら力量に差があっても補い合えますし、お互いのレベルアップにもつながると考えています。
開発部署から担当者に質問されることが多々あるのですが、彼らは担当者の個人的見解を求めているのではなく、知財グループとしての回答を求めています。二人一組で業務を担当することで、回答に個人的なばらつきが出ないというメリットもありますね。
山崎 互いのスキルを吸収することでメンバーのスキルが平準化され、グループ全体が底上げされることを期待しています。そのため組み合わせも業務ごとに毎回ランダムに変えているのが特徴です。もともと業務の属人化を避ける意図があったわけですが、メンバーの組み合わせを固定化してしまうと、それはそれで二人の個人商店が乱立することになります。そうした状況を避けるために、毎回、メンバーをシャッフルし、いろいろな組み合わせが並走する状態にしています。そうすることで、自分の担当ではない案件にも関心を持ってもらえると考えています。
山際 前職でも二人一組で担当することはありましたが、メイン担当とサブ担当という形で、基本的にメイン担当がほとんどの業務を担い、サブ担当は確認作業や連絡だけ行うといった補助的役割でした。それに対しコロプラのバディ制は、業務の濃淡はあるものの、二人三脚で業務を担当しています。
國府田 私も同じく前職で実感しましたが、知財業務を一人で担当すると、本当に属人化しがちなんですよね。担当者がいなくなると、途端にわからなくなることが多々あって困ったものでした。それに対し、コロプラでは二人が同じくらい案件にコミットしているので、たとえ片方の人が長期休暇で不在となったとしても、もう片方の人に聞けば現在の進捗などがわかります。これもバディ制の大きな利点だと思いますね。
組織をマネジメントする際に、心がけていることを教えてください。
山崎 私が心掛けていることは、「ワンチーム」という意識を培うことですね。
法務知財部は法務グループと知財グループに分かれていますが、ときには連携する業務もあるので、日頃からコミュニケーションを取りやすくしています。
座席のレイアウトにしても、普通はグループで集まるようにするものですが、あえて法務と知財のメンバーが入り混じった配置にしています。こうすることで日頃から会話や情報共有もしやすくなって、法務と知財の連携もスムーズになります。
あとは週に一回、法務知財部のメンバー全員でレクリエーションを行っていますね。
國府田 先日はみんなで脱出ゲームをやりましたね(笑)。
山崎 メンバー同士の親睦を兼ねて、知的なレクリエーションをやっています(笑)。
山際 私はメンバーそれぞれの業務のウエイトを意識してマネジメントしていますね。
知財グループは特許チームと知財戦略チームに分かれますが、それは業務のウエイトが違うということであって、異なる職種というわけではありません。
二人一組のバディ制では、特許チームと知財戦略チームのメンバーも組ませるようにしています。ただし、本来ウエイトを置くべき業務が疎かになってはいけないので、担当する業務の中で、一方は特許出願と調査業務のウエイトを上げ、もう一方は知財戦略を考えやすい業務負荷にするといった配慮をしています。
國府田 私の場合は目的を共有することを大事にしていますね。上層部で決めたことを強制的にやらせるといった感じではなく、「この方向で決めたいと思うけど、みんなはどう思う?」のようにメンバーの意見を聞いて、なるべく納得してもらいながら業務を進めて貰えるように心がけています。そうすることで、"我がごと感"を持って業務に取り組んでほしいと思っています。
バディ制には、どれくらい裁量が与えられていますか?
山崎 私が目指しているチームの在り方は、サッカー型のチームです。野球の場合、メンバーのポジションが決まっていて、監督やコーチのサインに従ってプレイしますよね。それに対してサッカーは、ポジションは決まっているもののフォワードが守備に回ってもいいし、キーパーがゴールを決めてもいい。試合前に戦術を決めていたとしても、一旦フィールドに出ると選手たちの現場判断になります。
二人一組のバディ制もサッカー型でありたいと思っています。そのためにも現場には最大限の裁量を与えています。
國府田 現場で決めたことは、できる限り尊重しています。
山際 特許出願するか否かの判断や調査結果の判断は、現場に結論を出してもらうようにしています。私と國府田は、偏った出願になっていないかといったバランスや、おかしな点がないかをチェックする程度ですね。
ゲーム業界における「知財戦略」の重要性とは
ゲーム業界において、なぜ知財戦略が重要になってくるのでしょうか?
山崎 近年のゲーム業界において、知財力は企業イメージや社運にも関わってくるものです。他社の特許により特定の技術が使えないとなると、開発環境も窮屈になりますので、どれだけ知財力があるかが、企業の競争力にかなり影響してきます。
國府田 これまではコロプラの技術を護っていく志向が強く、ともすると権利化すること自体を目標としているような状況でした。もちろん自社技術を適切に護っていくことは大事なため権利化していくことは必要ではあるのですが、権利化して終わりではなく、今後は、権利化後の先にある権利の利活用や企業のブランディングを見据えた活動が必要と考えています。
そのために、権利を取った先に何があるのか、何のために権利を取っているのか、という命題にこたえる「知財戦略」が必要だと考えています。
そのためには、先を見越して権利化していく発想が求められそうですね。
山崎 そうなんです。たとえば2021年にリリースされた『ユージェネ』は、ゲームとライブを融合させた「LPG(Live Playing Game)」という新ジャンルの確立を目指して開発されました。当然、ゲームのコアとなる重要な特許を権利化しました。現在はサービス終了していますが、もしLPGというジャンルに他社が参入することがあれば、高いハードルになっていたと思います。
また、現在進行形のものでは、2022年11月にコロプラの100%子会社として設立された株式会社Brilliantcrypto(ブリリアンクリプト)の事業があります。事業としては、ブロックチェーン、AI、メタバースの三つの要素があります。いずれも先進的な技術なので、他社よりも早く権利化することが求められます。まだ事業化されていないからといって出願せずにいると、あとあと事業化したときに困った事態になりかねないので、知財グループとしても先を見越して活動しています。
コロプラの知財業務を行う上で、ゲームの経験や知識は求められますか?
山崎 ないよりはあった方がいいですが、ゲームが嫌いな人はまずいないので、業務に携わっていくうちに自然と身に付けられると思いますね。そして、楽しみながらゲームに触れているうちに特許出願の観点も見つかるものだと思います。
山際 ゲームは誰しも遊んだことがあるものだと思いますので、他の業界に比べて入りやすいと思いますね。私の場合、前職は遊技機メーカーの知財業務を担当していましたが、お客様をドキドキさせたり楽しませるという点では、ゲーム業界と親和性が高いと感じています。それもあって、コロプラの知財業務にスムーズに馴染めたと思います。
國府田 私も前職は遊技機メーカーの知財業務を担当していましたが、エンターテインメントを提供している点では同じなので、そこで苦労することはなかったです。そういった意味では遊技機メーカーを含むエンタメ関連の業務に携わっていた方は親和性が高いかもしれません。また、もちろんそれ以外の方であっても、ある程度、知財業務の経験があれば、ゲームの知識は段階的にキャッチアップできますので問題ないと思います。
山際 実のところ、ゲームに詳しくなくても特許は出願できますが、ゲームが好きでいろいろ考えながらプレイしていると、より知財業務に活きてくると思いますね。
コロプラの知財業務で求められる経験や素養は?
みなさんは電子機器メーカーや遊技機メーカーのご出身ですが、他にはどんなバックグラウンドを持ったメンバーが活躍されていますか?
山崎 採用方針としてゲーム業界の経験を問わないことにしているので、特許事務所にいた方やコピー機メーカーの知財部にいた方など、さまざまです。
山際 むしろゲーム業界出身者は少なく、他の業界出身者の方が多いですね。
知財業務の経験はどの程度、求められますか?
山際 業務経験があるに越したことはないのですが、私は経験やスキル以上に「どれだけゲームに興味を持てるか」ということを重視しています。
その気持ちさえあれば、仮に知財業務の経験が乏しかったとしても、コロプラで仕事をしていくうちに、どんどん吸収できると思いますね。
山崎 あとは、知財業務はチームで進めていくものなので、コミュニケーション力を重視しています。いくら高度な専門知識があっても、チームプレイが苦手で周りに壁を作ってしまうようでは、コロプラでは活躍しづらいと思います。
國府田 知財業務は一人で黙々とできる仕事ではあるのですが、コロプラは二人一組のバディ制で担当するので、一緒に仕事を楽しむ姿勢が大事だと思いますね。やはりエンタメの会社なので、楽しい方がいいですよね(笑)。
ゲームが好きであることに関しては、いろんなゲームをプレイしてきた経験があれば、プランナーやエンジニアとのコミュニケーションにおいて活かされると思います。会話に昔のゲームタイトルが出てくることもよくあるので、新しいタイトルを知らなくても、昔やっていた経験があれば意外な共通点が見出せたりもします。
山崎 これからの時代は、AIが知識や経験を補っていくようになるはずです。しかし、会話のアイスブレイクのようなものはAIからは出てこない。愛想よくアイスブレイクを入れてから本題に入る人と、いきなり淡々と業務の話をする人がいたら、やはり前者と一緒に仕事をしたいと思うものですよね。
最終的には、人としての魅力があることが大事だと思います。
最後にコロプラで知財の仕事をしてみたいと考えている求職者に向けてメッセージをお願いします。
山際 知財の仕事というと、黙々とやる地道な仕事のように思われがちですけど、コロプラの知財グループは、エンタメ業界らしくみんなで和気あいあいと仕事をしています。
ぜひ一緒に楽しく仕事をしましょう!
國府田 コロプラはとにかく自由な環境なので、私みたいに髪を染めていても問題ありません。ちなみに私は、知財の堅苦しいイメージを変えたいと思って髪を染めています(笑)。
一緒に知財のイメージを変えたい人を歓迎します!
山崎 自己実現をしたい人を歓迎しています。
それは自分の専門性を高めたり、自分の好きなことをやりたいという意味での自己実現ではなく、会社やチームに貢献する意識を持って、自ら課題を解決するために動いていくことが真の自己実現だと考えています。逆に言うと、上から言われたとおりにやっていた方が気が楽だという人は、コロプラには向かないように思います。
自己実現の意志をもって能動的に動ける人と一緒に働きたいですね。