『白猫テニス』1周年 特別企画! 開発メンバーが語る、新作ゲーム開発の真髄
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プロジェクトマネージャー
福P
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エンジニア
エビッチ
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UIデザイナー
アッキー
2017年7月31日に、リリースから1周年を迎える『白猫テニス』。コロプラとしては初めて「対戦」を強く意識したゲームで、『白猫プロジェクト』のキャラクターを使うなど新たな試みをふんだんに入れ込んだプロダクトですが、リリースされてからもずっと進化を続けています。
今回は「1周年 特別企画」として、ゲームの【開発】に深く携わったメンバーと、現在進行形で【運用】に携わるメンバーにそれぞれ座談会を実施! まずは【開発編】として、『白猫テニス』の開発秘話から、バグを極力なくすために実施した大規模デバッグの全貌、そしてボツ案まで、たっぷり聞いてきました。日々さまざまなことが起こる現場で、開発チームのメンバーが一貫して目指したものとは?
『白猫プロジェクト』のキャラを使った本格テニスゲーム開発秘話
『白猫テニス』のリリースから1年が経ちますが、開発はいつ頃どんなふうに始まったんですか。
エビッチ 僕が覚えているところでいうと、数年前に当時の上長に呼ばれて「テニスゲーム作りたいと思っていて......」と言われていきなり始まったんですよね。
福P 当時、『ぷにコン(指一本で操作できるインターフェース)』を使ったタイトルとして『白猫プロジェクト』の開発が進んでいたんですが、『ぷにコン』はほかのゲームで使っても面白くなるのではないか、考えていました。翌年リリースされた『バトルガール ハイスクール』もそうです。「新たに『ぷにコン』を使ったスポーツゲームを作れないか?」となったときに出たアイディアの1つが『白猫テニス』でした。そこで呼ばれたのがエビッチさんですね(笑)。
なるほど。エビッチさんはなぜこのゲームの開発初期メンバーにアサインされたんでしょう?
エビッチ コロプラに入社する前に在籍していたコンシューマーゲームの会社で新作ゲームばかり作っていて、新作開発経験があったので白羽の矢が立ったのかなと思います。それ以外に自分が選ばれた理由が思い当たらないですね。
ちなみに、みなさんはテニス経験者ですか?
エビッチ いえ、テニス経験はゼロでした。
福P 学生の頃テニス部でした。
アッキー 僕は体育でやってたくらいです(笑)。
エビッチ でもテニスのことを知らずにテニスゲームを作れるわけもないので、同じくテニス未経験だったデザイナーと2人でテニスコートに出向いて、ひとまずボールとラケットを持ってみました。あとは有名選手の試合動画を見たり、チーム内のテニス経験者に「こういう場合はこう打つ」とかホワイトボードに書いて説明してもらったりして、「面白いテニスゲームって、どんなものなんだろう?」と、コアアクションを模索していきました。
福P コアアクションを作る上で大事にしたのはまず、操作が比較的簡単で直感的であること。「スマッシュ」「ボレー」などのテニス的なアクションでは、演出やSEも含めた爽快感のある演出やテニスらしさを追求しました。それから、対戦ゲームなのでマッチング・ロジックは仕様を悩んだ箇所です。
「マッチング・ロジック」とは、オンラインゲーム上で対戦相手を決めるとき、サーバー側で条件付けをすること、という認識で合っていますか。
福P はい、その通りです。『白猫テニス』はコロプラで初めて「対戦」を強く打ち出したゲームで必ず勝敗がつくわけですが、ある程度サーバー側で対戦相手の条件をコントロールしないと、プレイヤースキルがかなり違う相手と戦うようなことが頻繁に起こってしまいます。開発当時、ユーザー規模がわからない中でも相手とのマッチングまでの時間も考慮しつつ、極力実力差の少ない相手とマッチングできるように、と考えていました。あと、勝った人だけが楽しめるのではなく、負けても報酬はもらえるとか、ちょっとした待ち時間もテニスコート内でキャラが駆け回れるようにするとか、ゲームサイクルを円滑にさせるための仕掛けも取り入れています。
新作ゲームに『白猫プロジェクト』のキャラを使うにあたり、気をつけたことはありますか。
福P 『白猫プロジェクト』がリリースされてから約2年経って出す『白猫プロジェクト』のIPを使った新作ですので、見た目1つにしてもどうクオリティを出していくかが課題でした。たとえばキャラについては頭身を高くしたり、ボーン(3DCG上の骨)の数を増やしてラケットをグリップできる独立した指にしたり、顔の表情をUVアニメーションで表現することで対応しました。『白猫プロジェクト』チームのメンバーにも監修に入ってもらうことで、等身が変わっても、キャラごとの特徴を上手く出せるようにしています。
アッキー 僕がこのチームに呼ばれたのも、『白猫プロジェクト』のUIデザイン開発に携わっていたからだと思います。『白猫テニス』に関しては、まず本格対戦ゲームとして手に汗握るゲームビジュアルを確立する必要がありました。その上で、実際にスポーツとしてテニスをプレイしている体験も落とし込む必要があり、ゲームとリアルの体験を共存させる難易度の高いミッションだったと思います。タイミングを見てサーブする、移動してボールを打つ、スーパーショットを打って爽快感を味わうなど、ゲームとしてもテニスとしても成立するか、UIを模索する作業が続きました。
エビッチ お互いのイメージを理解して形にしていくので、思っていた通りに進まないこともありましたね。「こんな感じのものを作りたい」「こんな動きにしたらどう?」と何度も話したり、絵を描いて伝えたり、動きも仮素材を使いながらプログラミングを進めて、納得するまで作り直して。小さな要素を作って壊しての繰り返しでしたが、メンバーがイメージするものに着実に近づいていくのが楽しくて、やりがいはありました。
アッキー 作っては壊しての繰り返しはゲーム作りの醍醐味ですね(笑)。でも今回は泣く泣く諦めた表現も多かったです。その中でも「壮大過ぎてNG」という壁に初めてぶつかりました。
何があったんです?
アッキー 開発当初の「ワールドマップ画面」なのですが、地球儀の上を自在に飛び回って世界中のライバルを自分の足で探し当てて、そのまま試合に突入できるという、ビジュアル的に大変リッチな画面でした。コート上にいる『白猫プロジェクト』のキャラクターたちに会いに行くというコンセプトだったのですが、フル3Dだったために読み込みが重すぎて泣く泣くお蔵入りとなりました...(涙)。そこで3Dのキャラクターや背景を置かずに、シンプルな2D素材で構成された今のワールドマップ画面に落ち着いたんです。でも悪いことばかりではなくて、今では変わってよかったと思っています。
データが軽くなった以外にも、なにかメリットがあったんですか?
アッキー 3Dの地球儀の代わりに『白猫プロジェクト』の古地図をテニス風にリメイクして使ったんです。すると想定以上のリンク感が生まれて面白いビジュアルになりました。『白猫プロジェクト』のユーザーさまにとっては慣れ親しんだデザインと操作を取り入れることができたので、初めから自然にプレイできたかと思います。
エビッチ 思ってもいなかったような相乗効果が出ましたね。
アッキー はじめは『白猫プロジェクト』とは全く違うビジュアル、世界観を目指していたんです。ですがこのワールドマップ事件のおかげでやめました(笑)。それからは『白猫プロジェクト』と『白猫テニス』の隠れた共通点を見つけたときの驚きやワクワクを大事にしたいと思うようになりました。
福P 『白猫プロジェクト』と言えば、リリースにかなり近づいた時期に『白猫テニス』でも「チームタウン」を作ることにして、リリースに間に合わせたことを思い出しました。
アッキー あれも『白猫プロジェクト』の「タウン」の進化版と言いますか、楽しいものになったと思います。チャットや掲示板機能とか、追いかけっことか隠れんぼとか......(笑)、コミュニケーションのためのギミックをたくさん盛り込んで、「チームタウン」の中だけでも楽しめるようにしました。
福P 対戦だけでなく、友達やゲーム内で横のつながりを通して「チーム」を作り、ダブルスはみんなでワイワイできるものにしたかったんです。ライトなテニスらしさというか、部活とかサークルみたいな感覚があればより楽しいんじゃないかと。ただリリース直前に入れることにしたから、みんなには負荷をかけてしまったと思います。
エビッチ 負荷はそこそこでしたが(笑)、「最後にやろうぜ!」みたいな感じで、楽しかったのは覚えていますね。「入れたら絶対に面白くなる」と確信できましたし、リリースするときの喜びや達成感がすぐやってくるとわかっていたので、大変でしたけど、楽しかったです。
バグを極力なくすために実施した大規模デバッグの全貌
多くの方にプレイいただくゲームを作るときに、どんなことに気をつけていますか?
エビッチ 気をつけていることは本当にたくさんありますが、まずリリース前にいろいろなデバッグ(バグを見つけて改修すること)はいろいろやりましたよね。
福P やりましたね。『白猫テニス』は開発メンバーをはじめ50名近い人が毎日ひたすら「対戦」するということをデバッグの一環としてやっていたので、同じ形式でやることで日々バグの量も少なくなり、大きな事故なくリリースすることができました。ほかには社内大会(ベータ版を使ってプレイするゲーム大会)や、100名以上の新卒社員によるリリーステストなど、その時々でできうる大規模なテストは全て行いました。
アッキー あと「対戦」なので、ユーザーさまの「感情」を強く意識しました。対戦して勝ったら「嬉しい」ですし、負けたら「くやしい」ものですけど、そのときどんなデザインだと楽しくて、またプレイしたいと思っていただけるのか......ずいぶん考えました。これはボツ案になったんですけど、負けたときに床(テニスコート)をバンッ!と開けて、キャラを落とし穴に落とすデザインを提案したこともあります。コミカルで面白い演出になったのですがやっぱりNGでした(笑)。
福P 負けたときはそっとするのが一番いいのではと思ったんです(笑)。
アッキー やっぱり、そうですよね。勝ったら喜んで、負けたらさらりとしてほしいかなあというところに至って、負けたときのキャラの表情やポーズを決めました。
福P あと、「子どもレビュー」もとても大事にしていました。
「子どもレビュー」というと?
福P 小学生から中学生までの方がいるご家族に参加していただき、開発中のアプリで遊んでもらい、反応を見るんです。お子さんは本当に自由に遊んでくれるので(笑)、操作しづらい箇所やうまくUIが伝わってない箇所が明確になります。楽しそうに遊んでくれているかもポイントで、改良を重ねていくと遊んでくれる時間が増えていくんです。レビュー時間が過ぎても「もっと遊びたい!」と言ってもらえるようになるとリリースに向けて自信にもなってきます。子どもたちが飽きずにずっとプレイできるということは、大人が遊んでも直観的にプレイでき、楽しんでもらえるはずですから。
エビッチ 実際にプレイしている方の反応を見るときは「楽しそうだな。よかったな」とかで終わらず、本気で観察しますね。もう、じっと見つめてしまいます(笑)。
福P 真剣に観察してましたね。そういえば、あるときテニスボールのバウンド音をもっとリアルにしたい!と思って、社内の廊下で実際にボールをバウンドさせて録音したこともありました(笑)。
エビッチ あれ、いまもそのまま使ってますよね(笑)。
福P 使ってますね(笑)。ゲームに入れたときに、よりテニスボールの音らしく聞こえるよう加工はしてますけど。テニスの開発メンバーは「やってみた方がおもしろくなるのでは?」ということに対してすごく前向きにとらえてくれたから、すごくやりやすかったです。
ツーカーというか、みなさんの意思疎通がすごく早くできているように感じます。
エビッチ 普段から「対戦」を通じてコミュニケーションを取っていたのがよかったのかな(笑)。
いろいろなことがあったと思いますが、『白猫テニス』の開発現場で、みなさんが共通の想いとして持っていたのはどんなものなんでしょう?
福P 持てるアイディアは出し惜しみせずに、という想いでみんなやってくれたと思います!
エビッチ それはすごい感じる。
アッキー 出し切りましたね。
みなさんが【開発】の現場で力を出し切った『白猫テニス』。現在は【運用】チームが奮闘中です。運用のフェーズで、開発チームが助言するようなことはありますか。
福P 【開発】と【運用】では求められることが違ってくると思います。面白いコンテンツを作る点はもちろん同じですが、運用に入れば、ユーザーさまからダイレクトに声も届きますし、向き合っていくことになります。『白猫テニス』をより面白く魅力的にしていくのは、運用チームにしかできないことなので、これからさらに『白猫テニス』がどう進化していくのか楽しみです!
そうなんですね。今後、コロプラ採用では『白猫テニス』運用チームにも取材予定なので、詳しく聞いてきたいと思います!(本サイトで8月公開予定) 今日はありがとうございました!