ゲーム業界 CX(カスタマーエクスペリエンス)向上勉強会レポート
5月某日、ゲーム会社のお客さま応対部門のプロフェッショナル(CESA正会員)がコロプラに集まり、勉強会を実施しました。
ゲーム制作を生業にしている企業同士でディスカッションをするなんて、ちょっと意外に思われるかもしれませんが、各社が抱えている課題には共通点が多いのも事実です。その事例や解決策を共有することで、お客さまへのサービスが少しでも早く、より良い形で改善されるなら......という想いを持った有志が声を掛け合い、勉強会をしています。
今回の会場は、コロプラのリフレッシュスペース「COLOPL Park」でした。CX(カスタマーエクスペリエンス:顧客体験)の向上を目的とする会なので、コロプラのメンバーはお客さまに自宅のようにくつろいで過ごしていただけるように、"おもてなし" の心でお迎えしました。
各社のお客さま応対部門は現在、主にメールや電話で応対していますが、コロプラでは「もっと時代に合った、お客さまが日常的に利用されているプラットフォームに寄り添っていくべきなのでは」とその在り方を模索中です。
というのも、この数年で世の中は大きく変化し、メールや電話を利用される方は激減。代わりにLINEのようなチャットツールを利用される方が圧倒的に多くなってきました。とすると、メールを利用すること自体がお客さまにとっては高いハードルになっており、お問い合わせをしづらい状況なのではないか。メール以外の応対チャネルを拡大していく必要があるのではないか......という考えに至ります。
あるデータでは、2018年現在のサイレント・マジョリティ(物言わぬ多数派)はゲームをプレイしてくださる方の9割にものぼると試算されており、業界を問わず、お問い合わせの応対方法に関する審議が必要な時期を迎えているのかもしれません。
コロプラにおいても2018年5月、お客さま応対部門が大きく体制変更をし、それまで分かれていたデバッグ部門とサポート部門の業務をワン・ストップで行う「サービス品質向上グループ」と、CS(カスタマーサポート)の概念にとらわれない「CX(カスタマーエクスペリエンス)グループ」という新しい組織が誕生しました。
これにより従来のお客さま応対の枠にとらわれずに、顧客体験をより価値のあるものにするための創意工夫を自由にできる体制が整い、お客さまとの新たなコミュニケーション機会創出の準備を進めているところです。
さて今回の勉強会には、同様の課題を意識している7社が集まり、以下の2部制で行われました。
◆ 第1部:各社発表 〜メール応対以外で、お客さまにご満足いただく応対方法〜
◆ 第2部:グループワーク 〜少人数でディスカッション〜
本記事では各社の発表とグループワークの内容を一部リポートします。イレギュラーなものや構想段階のものも含まれますが、"今後こんなふうにしていきたい" という各社の想いが詰まっていますので、ご紹介させていただきます!
第1部:各社発表 〜メール応対以外で、お客さまにご満足いただく応対方法〜
1 お客さまのご意見をいただいたとき、どんな応対をしているか。
◆ メールでのお問い合わせ以外のチャネルについても積極的にご案内を実施。
◆ ご意見をもとに仕様改修を行った場合は、実装がなされた旨のご案内を一貫して行う。
◆ よくいただくお問い合わせには、「プロデューサー/ディレクターLetter」で回答(月1回。場所はゲーム内とブログ)。お客さま応対部門がメールで返答するより伝わりやすく、結果的にお客さまのお問い合わせの手間を減らすことができるなど、メリットが大きい。
◆ お客さまの不満を解消するために、会いに行くこともある。本当にお客さまに満足していただけるのなら、スマートフォンの中から飛び出して、なんでもやろうという対応スタンス。
2 お問い合わせのハードルを下げるために、どんな創意工夫をしているか。また、より多くの方のご意見を知るために、どんな行動をすると良いと思うか。
◆ お客さまがご意見を書き込みやすいように、リクエストボードを設置。『採用する/しない』も公開。
◆ オフラインイベントを定期的に実施し、運営スタッフとしてお客さまと交流させていただき、直接ご意見をお聞きしている。アンケートも必ず実施し、ゲーム開発に活かしている。
◆ 官公庁や消費者センターに訪問して、会社外に届くお問い合わせもチェック。
第2部:グループワーク 〜少人数でディスカッション〜
事前に用意された、グループごとに異なるお題に対してディスカッションを実施。全体に向けた発表も行いました。各社とも「お客さまに真に満足いただける応対とは何か」と日々模索しているので、同業他社の取り組みを知ると質問が次々と出て、議論がどんどん発展していきました。
1 "お客さまに頼りにされる存在" になるためしている、具体的な取り組みは?
◆ まず「お問い合わせ」の存在を知っていただくために、お客さま応対部門の取り組みが、お客さまの目にとまる機会を作っている。具体的には「お問い合わせ」へのサンクスメールを運営ブログ等に混ぜることで、お問い合わせをしていない方に知っていただくようにしている。
◆ お客さま同士で「あそこのサポートいいよね」と言われるような存在になれば、自ずと頼りにしていただけるはず。よって一つ一つのお問い合わせに誠心誠意を込めて向き合い、常に神対応を目指している。
◆ NPS(企業やブランドに対する愛着・信頼の度合い)を計測し、自社に足りないものを補っていく。
2 お客さまの声をゲームに反映させるために実施していること。これから導入したい取り組み。
◆ ご意見を集約し、毎週、開発チームに報告。その際、お問い合わせの内容だけでなく、ツイッターやレビューの声もセットで伝える。
◆ 社内報やデジタルサイネージなどで、全社員にお問い合わせ内容を共有。
◆ 開発チームの目標や事業目的に合う形で、お客さまの声を伝える。
3 お客さま応対の品質をチェックしていることは?
◆ お問い合わせに特化したアンケートの実施。(その際、お客さま応対に対する満足度と、サービスそのものの満足度については分けて考える必要がある)。
座談会を終えて
およそ3時間の勉強会を終えたとき、参加者からは以下のような感想が聞こえてきました。
◆ いろんな視点、思考回路を持っている人の話をたくさん聞けて、刺激になった。
◆ "お客さまに満足いただける応対とは何か" と日々模索しているので、みなさんの具体的な取り組みをまとめて知ることができて良かった。
◆ "自社の応対が正しいのか" の答え合わせができた気がする。自社がどれくらいのレベルにいるのかがわかった。