技術を駆使してゲーム体験を豊かにスマートフォンアプリの背景デザインのこれから 技術を駆使してゲーム体験を豊かにスマートフォンアプリの背景デザインのこれから
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技術を駆使してゲーム体験を豊かに
スマートフォンアプリの
背景デザインのこれから

北村康高

2016年コロプラに背景デザイナーとして中途入社。『ドラゴンプロジェクト』などさまざまな運用に携わる。3D背景組織のマネジメントも務める。『MONSTER UNIVERSE』や『PRINCIPLES』の開発に携わり、現在は新規開発のタイトルや技術検証を担当。

松尾脩図

2014年コロプラに背景デザイナーとして中途入社。『白猫テニス』の開発と『白猫プロジェクト』の運用を経て、現在は新規開発のタイトルに携わる。

宮窪直

2018年コロプラに新卒入社。『MONSTER UNIVERSE』『PRINCIPLES』の開発に携わり、現在は新規開発のタイトルや技術検証で2D、3Dの背景制作を担当。

コロプラでは、背景デザインはどのようなフローで制作されているのでしょうか。

松尾 まず、背景となる場所の特徴をプランナーと組み立てていきます。そもそもがどういう環境の場所なのか、暑いのか寒いのか、そしてどのような地形なのかを話し合います。
他にもマップ全体の広さや、ボスやザコ敵の種類や配置数、段差の有無などゲームとしてどのように遊びやイベントを盛り込むかが徐々に決められてくるので、その要件に沿って仮のアートを2Dで起こしながら、肉付けをしていきます。そういったやり取りをしながら、プランナーの企画意図と、我々アート側が考えるビジュアル的な楽しさ、気持ちよさが合致するところを模索していき、それらが固まったらあとはガッとデザインを詰めていくといった流れです。

3D背景を制作する中で、ここ数年で特に変わったと感じる部分を教えてください。

松尾 一番大きいところではテクスチャの作業です。以前までは、ハイライトなどをひとつひとつテクスチャを描き込む作業が必要だったのですが、PBR環境になったことで描き込みではなくShader側で表現する流れになりました。
これによるメリットは、純粋に質感の表現がアップすることです。個人個人で描き込みをするとどうしても、統一感やクオリティのバランスに若干のばらつきが生まれてしまうケースがありましたが、現在ではAdobe Substance 3D Collectionにより、質を担保しつつ、クオリティ・テイストの統一感も整えられるようになりましたね。


北村 もちろん、ツールを活用することで同じクオリティを出せるようになったからといって、個人のスキルやセンスが問われなくなったわけではなく、うまく使いこなすためにも、ベースとして必要な物理現象への理解やそれがイケてると捉えられる審美眼は以前と変わらず重要になります。

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制作環境やツール、モデル制作などの変化についてお聞かせください。

宮窪 例えば岩や崖などについては、Mayaでローポリのモデルを作成していましたが、現在はZBrushでハイモデルを作成しそれをローモデルにリダクションするなどの作成方法をとっています。
また、テクスチャについても大きな岩や崖を作成しようとすると解像度が足りなかったり、形状のメリハリが出しづらいなどがありましたが、岩専用shaderを実装したことで大きな岩のモデルでも密度がありメリハリのある表現ができるようになっています。

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松尾 僕が関わっている新規プロジェクトもそうですが、コロプラはファンタジー系のタイトルも多く、岩は背景のセクションではかなり重要で、画面占有率も高いため、パッと見でのゲームのクオリティがそこで判断される部分でもありますね。


宮窪 そうですよね。あとは、地面の汚れや水溜まりなどにはデカールを使用しています。 シーンの好きな箇所に後からスタンプのように情報を追加できる機能です。
以前の作り方では、汚れの表現を追加しようと思うと汚れを入れたモデルを書き出す必要があったのですが、デカールで作業すればシーン内で簡単に取り外せるのもメリットです。

作業自体も「ここを汚したい」となったときに、MayaとPhotoshopで作業してはUnityで確認して、と煩雑でしたがそれがこのツールだけで行えるのでシンプルに手っ取り早いです。
汚れの情報として独立したアセットになっているのでデータ量の削減にもなりました。

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宮窪 また、木の作成にはSpeedTreeを導入しました。木のモデルも以前は自分の手でひとつずつモデリングしていたのですが、プロシージャルに自然な枝振りがモデリングできるので、パラメーターを変化させることで様々な形状の木を短時間で作成することができます。
さらに手動でアート的なコントロールもできるので、量産性だけでなくクオリティも上げることができました。

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新作『MONSTER UNIVERSE』(※以下、『モンユニ』)において、背景として実現できたことを教えてください。

北村 作成するロケーションが決まった段階で、どのマップも軸となる表現を決めていきました。例えば最初に作成した草原では、GPUインスタンシングで大量の草を生やし、しっかりボリュームのある草原を表現できたかと思います。

あとは、リアルタイムライティングを採用しました。ベイクによる待ち時間がないため、最終ルックの確認までがスムーズで、昼夜の時間帯差分を作るのも非常に効率よく進めることができました。

新作『PRINCIPLES』での新しい取り組みについて、手応えはいかがでしょうか。

北村 技術検証の場でもあった『PRINCIPLES』では、ライティングまわりの表現力を高めていくことが目的の中でも大きかったので、リアルなテイストにはこだわってきました。
ディファードレンダリングによる多光源や、スポットライトのシャドウ、ProbeベースのGIなどのライティングまわりの制作環境が整ったことで、これまで苦戦してきた屋内のライティングの質を大きく向上することができたと考えています。


宮窪 作業環境で言うと、以前使用していたGIの機能では、ライトマップをベイクすると4時間ほど作業できなくなってしまうというような長時間のベイク、その他にもライトマップの解像度不足、ファイルサイズなど様々な課題がありました。
今回ライティングまわりの機能を実装していただいたことで作業効率が上がり、表現力を高めていくことができました。エンジニアの方々には本当に感謝しています。

北村 今回、さまざまな技術を使い、スマートフォンアプリとしてリリースできたことで、今後の新規タイトルやデフォルメテイストの作品を作るときに活かせる手応えやノウハウを得ることができたと思います。

『白猫プロジェクト』をはじめ、デフォルメ、イラスト的な表現が得意だということは認識していただきつつも、「リアルなテイストもできるよ」と、表現の幅を広げるアピールができたかなと思っています。同業者からのリアクションも一定数ポジティブなご意見をいただきました。個人的には海外の方々からも良い反応をいただけたことが嬉しかったですね。

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背景デザインでこだわっていることをお聞かせください。

北村 「空気感」を大切にしています。ゲームをプレイするときに、まるで実際に足を踏み入れたかのような表現を目指しています。シンボリックな場所や見どころであったり、同じマップ内でも大きく地形の変化をつけることで、歩いているだけでも心の振れ幅があるような、プレイしている時の心情も大切しながら制作しています。
『PRINCIPLES』では斜光をボリューメトリックフォグで表現し、よりリッチな「空気感」を感じられるよう意識しました。


宮窪 私がこだわっているのは、ゲーム体験を阻害しない背景づくりです。プレイを阻害しないように、進路への誘導を自然にすることを意識しています。
例えば『PRINCIPLES』では、プレイヤーが進みながら、自然と先に目が行くようにライトやオブジェクトを配置しています。 ビジュアルだけを重視してライティングすると迷わせたくない場所でプレイヤーを迷わせてしまうので、プレイヤーが進む道筋の地面を照らし、方向を誘導してから全体のライティングを調整しています。まずは迷わないような視線誘導を担保することが大事だと考えています。

松尾 自然な誘導というお話しがありましたが、ゲーム上で行けない場所、行ってほしくない地点がある場合、そこをいかに背景になじませるかも大事にしています。

壁や柵を置いて「行けません!」とするのは簡単なんですけど、それだけでは「ゲーム的に入れない場所」と強調されてしまうので、システマチックになりすぎないよう自然に見えるものを入れ込んでいきます。
例えば、「ここは工事中の現場で、荒々らしい職人たちが、資材を散らかして休憩を取りに行ってしまっているから行けない」というようなストーリーを感じさせるようにものを配置してみたりなどです。
そこに人がいなくても、背景から生活感や、現在の見た目に至るまでの物語も想像できるぐらいのビジュアルにすることを目指しています。

やっぱり、ゲームをプレイしてくれた方に、実際にこの場所に行ってみたい、と思って頂けるような説得力と世界観の広がりがあるステージづくりが出来たら嬉しいですし、生き生きとした舞台は、キャラクターをより引き立てると思っているので、そこにこだわって背景制作をしています。

今後、背景デザインの制作フローはどのように進化すると考えていますか?

北村 クオリティの進化もあると思いますが、どちらかと言うと短時間で効率よく作るという生産性の進化の方が目立ってくるのかなと思っています。

最近は、広大なマップを求められる機会が以前よりも増えていると感じています。そのため質を落とさず広さを担保する技術が今後も発展していきそうだと考えています。 いつの間にかAIでお絵描きできる時代なので、どう進化していくか未知な部分も多いですが願望も交えて、そう思っています(笑)。

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コロプラのチームの雰囲気を教えてください。

松尾 風通しがよく、チーム内の技術やアイデアの交流が活発に行われていて、業務で困ったことが発生しても気軽に相談できる環境で、協力体制が整っていると思っています。
自分が携わっている新規プロジェクトのチームでは、定期的にゲームのプレイ会が開催されていて、役割に関係なくチーム内で感想やアイディアを発言しあっていて、ゲームにも積極的に反映されています。


北村 あとは、スキルを学べる環境もありますね。
技術共有を目的として『PRINCIPLES』での背景制作のノウハウ動画をつくって公開したり、必要であれば『PRINCIPLES』の環境をほかのプロジェクトの方々にも見てもらうなど、いつもと違う環境を実際に体感してもらうことで知識やスキルの向上へとつなげられるように取り組んでいます。

また運用タイトルの業務中だとなかなか新しい技術の習得が難しいこともあるので、新規プロジェクトにアサインされる際は、事前にラーニング期間を設けています。
物理現象への理解、それを表現するためのアプローチの学習を目的としている「PBR実習と座学」があり、期間は1ヶ月ほど確保しています。用意したカリキュラムで学んでもらい、ZBrushやSubstancePainterなどの基本的なオペレーションを習得してもらっています。

最後に、背景デザイナーとしてどんな人と一緒に働きたいと思いますか?

松尾 自分の中に作りたい絵を持っている人は活躍できると思っています。理想の絵をイメージし、それを実現させるために積極的に行動ができる人だったり、ゲームのアートが好きなことはもちろんですが、ゲームに限らずさまざまなジャンルにアンテナを張ってアートへ反映できる人と一緒に働きたいと思っています。


宮窪 『PRINCIPLES』のように、今後もさらに新しいことにチャレンジしていきます。積極的にいろいろな情報を集めながら、一緒に試行錯誤できる方と働けると嬉しいです。


北村 『PRINCIPLES』で表現力の向上という目標についてはある程度実現できたので、今後は質だけでなく生産性の効率化に目を向けていきたいと思っています。まだまだノウハウとして至らない部分も多いと思っているので、高水準なグラフィックに興味を持って、よりクオリティアップを目指せる方とご一緒したいです。

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今後リリースされるゲームが、どんな技術の進化を見せてくれるのか楽しみです。本日はありがとうございました!

※ 本インタビューは撮影時のみマスクを外す等、感染症対策を十分にした上で行いました。

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