イメージを的確に伝え、イラストのクオリティーを管理するイラストディレクター
-
イラストディレクター
A.T
美大で日本画を専攻。コンシューマーゲームの制作会社に新卒デザイナーとして就職し、その後、アートディレクターを務める。2014年コロプラに入社。現在は新作タイトルを中心にイラストディレクターを務める。
イラスト制作のディレクションをする仕事。デザイナーと協力会社の仕事量を把握して、アサインしていきます
前職までは自分でキャラクターデザインやゲーム内のグラフィック素材の作成をしていましたが、コロプラに入社してからは主に社内デザイナーと協力会社の作家さんをマネジメントする業務を担当しています。イラストの方向性を決めたり、クオリティーについて指示を出したりしますし、アサイン業務や進捗状況の確認といったリソース面でのディレクションもします。
業務の流れでいうと、まずプランナーとメインデザイナーから「次のイベントでこんなキャラが必要になります」という依頼があり、その内容をもとにラフと説明文の仕様書を作り、さまざまな資料を準備してデザイナーや協力会社の作家さんにアサインしていきます。
現在メインで担当しているのは新作タイトルを含む3プロジェクトのリソース管理です。その際、各メンバーと作家さんの仕事量を把握しておかないと、一人の人に仕事が集中して、結果、納期に遅れることになりかねません。進捗状況を見ながら、もし納期が危なそうだと感じたときは事前に対策を考えておくなど、ある程度、予測をしながら業務を進めていくことが求められます。
イラストが上がってきたら、今度はフィードバックしていきます。それがイメージどおりでクオリティー的にも問題なければスムーズなのですが、たまにイメージと違うデザインが上がってくることもあります。たとえば「冷たい感じのドSキャラ」というイメージを伝えると、ひょうひょうとしたキャラであまりSっぽくないイラストが上がってくる......というような感じです。これは人によって「冷たい感じ」や「Sっぽさ」のイメージが違うので難しいところですが、そんなときはあらためてイメージをすり合わせていきます。
「絵を描く仕事がしたい」と思ってデザイナーになった私が、ディレクション業務を担うようになった理由
私は美大で日本画を専攻していて、「絵を描く仕事がしたい」と思ってゲーム業界に進みました。コンシューマーゲームの制作会社に新卒デザイナーとして入社し、最初の2年間は2Dデザイナーとして仕事をしていたのですが、途中からアートディレクターの仕事にシフトしました。本来アートディレクターはゲームの世界観や絵のクオリティーに指示を出す仕事ですが、少人数の会社だったので、2D・3Dのクオリティ管理やデザイナーのアサイン業務だけでなくプロジェクト全体のスケジュール管理、ディレクターの補佐やクライアントさまとの交渉などあらゆる業務を担当していました。
もともと「絵を描く仕事がしたい」と考えていた私が、なぜそうした役割を担うようになったかというと、前職の会社にディレクション業務を担う人がいなかったからです。クリエイター職の人は、当然ですが管理よりも実際のものづくりをしたい人が圧倒的に多いので、リソース管理を自ら志願するような人はなかなかいません。
でもリソース管理ができていないと、仕事ができる人に仕事が集中して、その一方で手が空いている人がいるというアンバランスな状況になってしまいます。チームのメンバーが大変な思いをしているのを見かねて「どうにかしたい」と思い、消極的にやっていたアサイン業務やスケジュール管理を積極的にやる必要があると考えるようになりました。私はチームで仕事をすることが好きなので、仲間が仕事しやすいと感じられる環境づくりに貢献したいと思ったんですね。
不満を溜め込みながら仕事をしてもいいものはできないと思うし、もしメンバーの誰かが身体を壊したりすると、プロジェクト自体がうまく回らなくなってしまう。私は絵を描くことも好きだけど、ディレクション業務もなんとかやれる、他に適任者がいないなら「自分がやるしかない」と思いました。
クリエイティブの知見を持ち、的確にイメージを伝えていくことが、この仕事の要です
この仕事にはある程度デザインのことがわかりながら、プロジェクト全体を見通してリソースを管理していくという2つの面が求められてきます。ゲーム業界の経験は必須ではありませんが、できればイラストを描いてきた人や、クリエイティブな知見がある人が望ましいと思います。
というのもクオリティを管理する際にイラストの良し悪しがわかることや、描き手の得手不得手を把握することが大事になってくるからです。たとえば、カワイイ女の子を描くのが得意な人に、マッチョなキャラをお願いするとミスマッチになってしまい効率が悪くなってしまいます。修正のフィードバックを出すことになるのでなるべく避けたいものですが、描き手のことをちゃんと理解していないと正しい指示もできないものです。
仕様書やフィードバックの際の伝え方がむずかしくて、この業務を始めた頃にはたくさん失敗しました。私の仕様書がわかりづらかったために、当初のイメージとまったく違うデザインがあがってきたことがありました。あらためて自分が書いた仕様書を読み返してみると、この文章の表現だとたしかにそう受け取られるよな......と反省しましたね。ここにもうひと言があれば、うまくいったかもしれないと。
ほんのひと言のニュアンスの違いで、思っていた絵と違う絵ができてくることは多々あるので、その言葉がどう受け取られるかを想像できることが大事になってきます。逆に、思い描いていたイメージがうまく伝わって、クオリティーの高いデザインが上がってきたときは、やった!と思いますね。さらにその作家さんならではの魅力がプラスされていると、すごくうれしくなります。
自分ひとりでも絵は描けますが、ひとりでできることには限界がありますよね。チームで意見交換しながら作っていくことで、他の人の発想やこだわりに刺激を受けてお互いに高め合っていくことができます。人と接しながらひとつのものを作りあげていくことが好きな人であれば、成長を実感できる仕事だと思います。