コロカ事業
徳島・すだちバーモント
- 店舗レポート
すだち・ミーツ・バーモント
そんな養蜂場は、1980年代後半に方向性を転換します。蜂蜜の美味しさをより手軽に知ってもらう方法を模索するなかで、清涼飲料水の開発に着手します。
野田さんの祖父と父親は、アメリカのバーモント州で生まれたリンゴ酢と蜂蜜のドリンク「バーモント」に注目。お酢の酸味を、徳島県の特産品すだちを使って生み出すことを思いつきます。
当初は蜂蜜と果汁と分けたものを販売し、お好みで卵などを入れたうえで付属のシェイカーで各自作ってもらうという形でしたが、もっと手軽に飲んでもらおうと、原料を薄めるだけで簡単に飲めるよう改良された「すだちバーモント」として売り出されることになったのです。すだちの香りと酸味を活かしたこのドリンクは、すだちを愛用する徳島の人たちを中心に売れ、同店の定番商品となりました。
徳島県には欠かせぬ味
徳島県の人にとって、「すだち」はどれくらい日々の生活と結びついたものなのでしょう。県外に暮らす人たちにとっては、「居酒屋で焼き魚を注文した時についてくるもの」といった程度の認識しか、ないのではないしょうか。
野田さんによると、徳島県ではすだちの季節になると、どの家庭の冷蔵庫もすだちでいっぱいになると言います。酢の物や漬物に絞ったり、すだち酒にして飲んだりするんだとか。その他、「二日酔いの朝に、すだちを味噌汁に絞って飲むと、すぐに回復しますよ」と、野田さんは教えてくれました。
そんなすだちは、なぜ全国的な存在となっていないのでしょうか。野田さんは、「これまで徳島でのみ集中して消費されたため、他県の人たちにとって『料理に欠かせない味』になり得なかったからでは」と話してくれました。
まずは「すだちの味を知って」
「だからこそ」と、野田さんはすだちバーモントを通し、すだちの名を全国的に知らしめたいと考えているそうですが、すだちを取り巻く環境は楽観視できるものではありません。2009年頃、すだちが大豊作となったことで価格が暴落し、多くの農家がすだち栽培から離れてしまったことや、農業従事者の高齢化が進んでいることなどが主な原因です。
また、品種改良でたね無しすだちを作った結果、すだちの魅力である香りが損なわれた品種が市場に出回ってしまい、すだちを好んでいた人が「ゆず」や「かぼす」を使うようになったということがありました。
「まずは全国各地ですだちを栽培してもらうことから始め、そこに暮らす人たちにすだちの味を覚えてもらうことが重要です」と野田さん。10年、20年といった長い年月をかけてでも、すだちを広めていく考えでいるようです。