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奈良・飛鳥の蘇


 

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「蘇」との出会い

「猪熊先生に協力したのが始まりです。」

当時、奈良国立文化財研究所飛鳥資料館(現在の奈良文化財飛鳥資料館)の学芸員室長だった猪熊兼勝先生が「万葉の衣・食・住 展」というイベントを開く際に、飛鳥時代に実際に食べられていたという「蘇」を再現し、みなさんに食べてもらおうと企画されたそうです。

西井さんは生乳を提供、蘇の試作に協力しながら猪熊先生に「これをこの土地の名物に出来ないか」と相談をしました。

この土地には歴史的遺産はたくさんありますが、お土産物に適した加工品がありません。そこでこの土地の名物を作り、まちを盛り上げたいと思いついたのです。酪農が下火となり、余ってしまう牛乳が増える中で一石二鳥の取り組みだったようです。

 

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100%生乳、完成までに12時間

「蘇」の工房へお邪魔すると、辺りにはぷ~んと甘くて芳ばしい香りが漂います。ナッツのような、カラメルのような、懐かしい香りです。原材料を聞くと「牛乳100%」というから驚きです。

その日の朝に搾りたての生乳が40kgほど運ばれ、この機械へ入れられ100℃まで温度を上げて沸騰させます。そのあとはただ焦がさないようにひたすら機械の中で混ぜ続け、水分を飛ばしていくと出来あがり。季節によって違いがありますが10時間~12時間をかけてゆっくりとかくはんしていくそうです。奥様が付きっきりでこれにあたります。

すると朝には真っ白だった牛乳は少しずつカラメル色になり、粘りが出てきます。甘い香りも牛乳が本来持っている糖分によるものだということ。また、菌を入れて発酵させるわけではありませんから、厳密に言うとチーズとは少し違うそうです。

 

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美味しい「蘇」のもと

牛乳は自然の産物です。成分は季節や牛の状態で少しずつ変化していきますから、蘇もそれに合わせて少しずつ味が変わるそう。なるべく同じ味を楽しんでもらえるように調整されているそうですが、どうしても原料の牛乳に左右されるということ。ごまかしが効きません。

練り上がった「蘇」は、重さを測りながらひとつずつ木型へ入れられ固められます。これをスライスしたら完成。作り方はいたってシンプルですが、半日という時間をかけ、また経験と勘を頼りながらの工程です。

「リピーターのお客様が感想を伝えてくださるので、少しずつ改良を加えながら安定した味を提供できるように努力しています。」

奥様がほほ笑みながら教えてくれました。

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