コロカ事業
富山・ほたるいか活漬け
- 店舗レポート
鮮度の理由は「近さ」にあり
お店を訪ねたのは、漁期にあたる4月。「全国から注文があり、一年で一番忙しい時期ですよ」と話すのは、取締役の砂子典章さん。旬のほたるいかは鮮度が何より大事。砂子さんも早朝から漁港や工場を忙しくかけまわっていました。
漁港から定置網のうきが見えるほど、滑川は漁場が近いのが特徴です。「工場も漁港から1kmしか離れていません。漁船は毎朝2時半に出て4時半頃に戻ってきますが、早いときで5時過ぎには工場で加工が始まります。水揚げから加工までの時間が短い。つまり、それだけ鮮度がいいのです」
水揚げされたほたるいかは、すぐに海洋深層水が入った水槽へと移します。この海洋深層水は、富山湾の水深300m以下から採取したもの。水温が低く一定で、普通の海水よりも、ほたるいかの鮮度を長く保つことができるのだそうです。
人の手がいちばん丁寧
本店に隣接した工場をのぞくと、ちょうど「ボイルほたるいか」を作っているところでした。漁港から運ばれたほたるいかが大きな釜でゆでられ、素早く冷やしたあとに容器詰めされて冷蔵庫へとどんどん運ばれていきます。
「味を落とさないために、もっとも気をつかうのが温度管理です。さっとゆでる以外は、常に冷やした状態を保つよう細心の注意を払っています」と砂子さん。地元の女性たちが、なれた手つきでてきぱきと作業を進めているのが印象的でした。大量のほたるいかが出荷されていますが、工程のほとんどが手作業なのです。
「一部を機械化したこともあります。確かに早いのですが、ほたるいかは小さくてデリケートなので、機械にはさまって傷つくこともある。結局、人の手で扱うのが品質を保つには一番いいと思い、手作業に戻したのです」
オリジナル商品「活漬け(いきづけ)」
桜色にゆでられたほたるいかを食べてみると、身はふっくらとしてほのかな塩気があり、くさみを全く感じません。「新鮮なものはおいしいでしょう? このとれたての味を全国に届けたいというのが一番の思い。いかに鮮度を保つかに、専門店としての長年の経験や技術が生きてくるのです」
「ボイルほたていか」は漁期限定ですが、お店には一年を通じて楽しめる加工品も揃います。なかでもほたるいかを生きたまま1~2日間醤油に漬けた「活漬け」は、この店だけのオリジナル。漫画『美味しんぼ』にも登場したという、父親の砂子良治さんが考えた商品です。
「ほたるいかが醤油を吸ってピュッと吐き出すんです。だから中までしっかり味がしみてますよ」と砂子さん。身はとろりとして、まるでお刺身のよう。酒の肴だけでなく、炒めてパスタの具にもおすすめです。
宣伝よりも品質を優先
このほか、ほたるいかのすがたぼしや燻製、すがた作りなど、漁期以外でも購入できる商品はまだまだ種類豊富。ほたるいかと並ぶ富山湾の名物・白えびを使った昆布〆や酢漬けなども販売しています。ほたるいかミュージアム店でお土産として購入した人が、その後リピーターになって注文してくれることも多いそうです。
「鮮度など品質には人一倍こだわっているつもりですが、実は、宣伝や販売はあまり得意じゃないんですよ」と笑う砂子さん。「活漬けもほとんど外には卸していないんです。それでも、ちゃんと売れているから有難い。『よその店じゃ買えないわ』と遠方から通ってくれる常連さんもいます。それを聞くと、絶対に品質に手は抜けないなと思います」