八百万神秘譚4
都に眠る悠久の歌
「先行プロローグ」
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天の声
ミコト・ウタヨミに告げます。これよりあなたは、人間として生きなさい。
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それは唐突なお告げだった。
神からの託宣は前触れがないものだと相場は決まっているが……。 -
ミコト
それにしても、いきなりすぎます!どうして!? どうしてですか!?
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天の声
胸に手を当てて今までの行いを反省するのです。
あなたは八百万の神なのに神様としての仕事もせずに異国に渡ってはしゃいだり――
八百万の神にふさわしくない社を作ったりと――
近頃の行動は、少々目に余ります。八百万の神としての品位を取り戻すまで反省すべきです。
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ミコト
あう。
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仕事をしてなかったのは、社への参拝客が全然来なかったためだが、それ以外は言い返す言葉もない。
考えてみれば、ここ最近周りに流されるばかりで自分を見失っていたかもしれない。 -
ミコト
人間として生きる……ということは、つまり、私は八百万の神ではなくなるのでしょうか?
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天の声
はい。
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ミコト
あわわ。そんなあっさりと……。
さすがに衝撃を隠せないミコトに対して八百万の偉い人は続けて言う。
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天の声
私はあなたに下界の人々に敬われ、感謝され、愛される。そんな神様になって欲しいのです。
そういう神様になるために下界でしばらく勉強するといいでしょう。
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ミコト
つまり……?
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次の瞬間、ミコトの視界は真っ暗になった。
偉い神様の姿も上界の景色も……なにもかも視界から消えてしまった。
意識を失ったミコトが、しばらくたって目を覚ました時には――
見知らぬ場所にひとりで立っていた。
ここはどこかと尋ねようにも行き交う人たちは、見知らぬ下界の人間たちばかり。
町角で呆然と立ち尽くしているミコトを奇異な目で見てくる。
ミコトは泣きそうになる感情を抑えて和歌を詠む。 -
ミコト
春花の 匂い尽きたる 涙橋
別れの文を 送る間もなく -
君とウィズは、ギルドの依頼をこなしている最中。またしても別の世界に飛ばされてしまった。
戸惑う暇すら与えられないのはいつもどおりだから、今更驚く理由もない。 -
ウィズ
キミ、見るにゃ。きれいな花が咲いているにゃ。いい景色にゃ。
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目の前に広がる無数の花。確かに桜色に染まった景色は、心が洗われるほど美しい。
でも君は、なんとも言いようのない不気味さも感じていた。
夏の暑さすら感じる今の季節に、こんな儚げな花が一面に咲き誇るのは、少々奇妙だった。 -
ウィズ
言われてみれば、桜はこの時期にはふさわしくないかもしれないにゃ。
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見上げたウィズの顔に飛び散った桜の花びらがまとわりついた。
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ウィズ
でも、この景色は見ていて気持ちがいいにゃ。なんだか、心がふにゃ~と……。
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なんだかウィズの様子がおかしい。
君はウィズを抱き上げてその場から逃げだそうとした。 -
???
季節外れに咲く桜は、人のみならず鬼の心すら狂わせる。そんな言い伝えがあります。
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声が聞こえた方を振り返る。
そこにいたのは、艶やかな黒髪の女の子。 -
ウィズ
もしかして、ミコトにゃ?
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突風と共に花びらが舞い飛び、君たちの視界はまたしても桜色に覆われた。
風がやんだあと、君が顔をあげると――
黒い髪の女の子は、どこにもいなくなっていた。 -
ウィズ
どこに行ったにゃ?キミ、さっきの人はどこに行ったにゃ?
君とウィズは、舞い落ちた花びらを踏み締めながら先に進む。
ふと、誰かの歌らしき声が君たちの耳に届いた。-
???
夢辿り 八重の桜が 狂い咲く
妖花降り来て 悪鬼ぞ踊れ -
不気味な歌だと君は感じた。
誰が歌っているのだろう?どこを見渡しても、声の主らしき者の姿は見えない。
でも、その不気味な歌は、やむことなく延々と聞こえてくる。
あまりこの声に耳を傾けてはいけない。
気を強く持って君たちは、先へと進む―― 光に包まれたあと、周囲の景色がさらに一変する。
ウィズ
ここは……。やっぱり、ミコトたちのいる世界にゃ!
町中を行き交う人々の恰好でわかった。
ミコトたち八百万の神々に見守られている世界。過去に何度かやってきたことがある。ミコト
そこにいるのは、ウィズ様ですか!?
ウィズ
ほら、ミコトの声が聞こえるにゃ。
突然、大きな声を張り上げたミコトに周囲の通行人たちが反応を見せる。
八百万の神であるはずであるミコトが、どうして人間たちに混ざってこんなところにいるのだろう?ミコト
ウィズ様、それにお供の方、お会いしたかったです!
ウィズ
ミコト、く……苦しいにゃ!そんなに強く抱きしめないで欲しいにゃ。
どうしてここにいるのかと、君はミコトに尋ねた。
ミコト
実は、私……私……。神様の資格を失っちゃいました。
ウィズ
なっ!? それは本当にゃ!?
ミコト
本当なんです~。だから助けてください。ウィズ様とお供の方!
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《続きは「八百万神秘譚4 都に眠る悠久の歌」本編にてお楽しみください》