コロカ事業

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越前・杉原商店の漆和紙


 

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取材の前に

軽く挨拶を交わすと、我々は杉原さんに導かれ事務所を離れます。

敷地入口の正門奥にある築100年ほどのご自宅の応接間へ案内されると、何やら和紙で作られた帳面を広げる杉原さん。

「来て頂いた方々には記念に名前を書いていただいているんです」

と、さらに墨と筆が入った書道セットを差し出されます。

和室での取材なので久しぶりの正座、加えて小学校卒業以来の書道。足は直ぐに痺れ、慣れない筆を持つ手は小刻みに震えます。

都会では当たり前のようにソファにテーブルでの生活。会社ではタイヤ付のオフィスチェアーとデスクでのパソコン作業。欧米化や便利さを追求した近代の生活習慣がすっかり定着した日本。現在、ほとんどの人が日常生活に和紙を用いることはありません。

そんな中で、今後和紙をどう表現していくのか。越前和紙、杉原商店の歴史を含め、和紙の未来に関しても杉原さんに聞いてみることにしました。

 

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和紙の起源

紙の起源はおよそ2000年前の中国とされています。その後、日本へは朝鮮半島を経由して飛鳥時代の610年頃に伝来。

朝鮮半島の高句麗(こうくり)という国からやってきた曇徴(どんちょう)僧侶が、仏教と共に紙漉きの技術や墨を伝えたとされています。(因みに「紙を漉(す)く」とは紙を作ると言うこと)

当時の紙は麻で漉かれた麻紙でしたが、麻は繊維が長すぎるため取り扱いが容易ではなく、次第に日本では楮(こうぞ)や三椏(みつまた)、雁皮(がんぴ)という植物を原料にするようになり、日本独自の紙「和紙」へと発展していきます。

これは紙の日本伝来から100年ほど経過した奈良時代に入ってからのことです。

そして、平安時代に入ると原料だけでなく製紙法も日本独自に改良され、徐々に現在でも作られている和紙の原型に近づいていきます。

 

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紫式部も使った紙

越前での紙漉きの歴史は明確ではありませんが、紫式部の「源氏物語」は越前和紙を使い書かれたという謂われもあり、平安時代にはその存在の片鱗を見せ始めます。

そして、越前は日本でも比較的紙漉き技術の伝来が早く、その技術の発達も他の産地より優れていて、さらに綺麗な水や原材料の植物にも恵まれ、薄くて丈夫な質の高い紙を漉くことが出来ました。技術もさることながら京都から近いという立地条件も相まって、鎌倉時代には、奉書など幕府の公文書に使われ、江戸時代には各藩ご用達の和紙を製造するようになっていきます。

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