昴:「ちょっと、何ぶつぶつ言ってるの?」
遥香:「9周年がどうとか言ってたけれど......いったい、なんの話かしら?」
アルル:「ハッ......!?」
「ぼ、ボクとしたことが、つい現実逃避をしてしまっていたでしゅ!」
みき:「たしかにちょっと気になるけど......イロウスをこのまま放っておけないよ」
「----トドメをささなくちゃ。いっくよ~っ......!」
アルル:「まままま待つでしゅ!無抵抗のこんな可愛い生き物になんてひどいことをしようとしてるでしゅか、あんたたちは!」
昴:「"無抵抗の可愛い生き物"って......普通にイロウスでしょ」
遥香:「見たことない形はしているし、しゃべる個体も初めて見たけれどね」
アルル:「それなのにイロウス認定してやっつけようとしてるなんて、なんて外道でしゅか!星守の名が泣くでしゅ!」
みき:「星守の名が......?」
遥香:「......そんなふうに言うということは、あなたはイロウスじゃないということかしら?」
昴:「じゃあ、なんなの?」
アルル:「うっ......!ボ、ボクは----」
アルル:(こんなふうにまた星守から睨まれることになるとは......。絶体絶命のピンチでしゅね......)
(......でも、やっぱりおかしいでしゅ)
(星守達の星衣も見たことないものでしゅし......、どうやら星守達も一度見たら絶対に忘れることのないはずの、ボクのこのキュートなボディに見覚えがないようでしゅ)
(それに、空気も......ボクがいた世界と、全然違う感じがするでしゅ)
(それなら、ひとまずここは----)
アルル:「え、ええっと......その前に念のための確認なんでしゅが、ここは何年何月何日、地球が何回回ったときでしゅ?」
昴:「はあ? なにとぼけてるの?」
「忘れたとは言わせないよ。あんたたちイロウスのせいで、アタシ達はもといた星を追われてるんだから」
アルル:「......しゅ? 星......って、地球をでしゅか?」
遥香:「チキュウ、ってなんのことかしら。わからないけれど、ここは別の星よ」
「私達が住んでいた星は、ある強大な力によって侵略されたわ。そして、その力がイロウスを生み出したの」
「そしてやがて、イロウスは私たちの星を征服して、私達は星を追われた......この星は、そんな人達を受け入れている避難所のようなものよ」
みき:「......ここでの生活は好きだよ。でも、私達は自分たちの故郷を、あんな力に奪われて放っておくわけにはいかないから、立ち上がったの」
「みんなと一緒に、私達の星を取り戻すために!」
アルル:「しゅ......」
(なるほどでしゅ......だいたいわかってきたでしゅね)
(やっぱりこの星は、ボクが元いた世界じゃない。おそらく......並行世界というやつなのでしゅ!)
(そして今のこの世界は、とてもよく似ていましゅ)
(かつてイロウスが地球を侵略し、人類をコロニーに追いやった時のことに......!)
(そして星守たちが言った『強大な力』......これは、ボクのいた世界でいうイリス様のような存在がいるということ......)
(この世界にイリス様がいるかどうかはわからないでしゅが......これがこの世界の星守との敵対勢力であることは間違いなさそうでしゅ)
(そして今は、その『強大な力』が優勢な状態......。それなら......ボクがやるべきことは、やっぱり......)
(星守という存在への、リベンジ----......!)
昴:「ちょっと、なんでずっと黙ってるの?」
みき:「やっぱり、トドメをさしたほうがいいんじゃないかな」
アルル:「まままま、待つでしゅ、色々考えていただけでしゅ~~!!」
アルル:(くっ......世界情勢的には星守の劣勢のはずなのに、今のボクの状況が圧倒的劣勢でしゅ!)
(せっかく訪れた復讐の好機......絶対に無駄にしたくないでしゅ。とはいえ、また失敗して元いた世界のような結末を辿るのは愚策オブ愚策でしゅ!)
(......考えるんでしゅ。この世界でボクの『星守復讐計画』を完遂する方法を......)
(え~っと、え~~っと、え~~~っと......)
???:「グガァアアアア!!!」
アルル:「しゅっ!? こ、こいつは......!?」
遥香:「イロウス! また出たわね!」
アルル:「えっ? これがイロウスでしゅか?」
「ボクの知ってるのとは全然違うでしゅね......っていうか」
「こんなキモい生物とキュートなボクを同じイロウスだって言ってくるお前達、頭沸いてるんじゃないでしゅか!?」
イロウス:「グワァアアアア!!」
アルル:「おぎゃーーー!!! こっちきたでしゅ!!」
「......くっ、なんでボクばっかりこんな目にあうんでしゅか。ここ数年は運営に年1回の便利マスコットとしても、立派に活躍してきたじゃないでしゅか」
「それなのにいつもコラボやらなんやらで実装されるのは星守達ばっかりで、いつもボクは使いまわしの立ち絵イラストだけで新規書下ろしイラストさえもらえないでしゅ」
「......イライラしてきたでしゅ。今ならやったれるでしゅ。くらえ----」
「"積年の恨みパンチ"!!!ウラウラウラウラウラァ!!!」
イロウス:「グオオオオオオ!!!!」
昴:「......! イロウスが......!」
みき:「そんな......イロウスがイロウスを倒すなんて......!」
アルル:「だからこんなキモ生物と一緒にすんじゃねえでしゅ!お前達に"積年の恨みパンチ"くらわせてやってもいいんでしゅよ!?!?」
遥香:「っ......!」
アルル:(ハッ......ちょっと調子にのりすぎたでしゅかね!?)
「い、今のは言葉のアヤってやつでしゅ。ボクは悪いイロウスじゃなくて----」
昴:「......それじゃあ、なんなの?」
アルル:「へ?」
昴:「人間でもなくて、イロウスでもない......けど、普通に会話できる不思議な生き物......。それって、なんていう生き物なの?」
アルル:「そ、そ、それ、は......」
「......僕にもわからないでしゅ。き、記憶喪失なんでしゅ......」
みき:「記憶喪失......」
アルル:(うっ......ちょっと苦しい言い訳すぎでしゅかね? か、かくなるうえは......)
「で、でもでも、ボクは悪いものは倒さなきゃいけないと思ってましゅ!」
「だからイロウスを倒す活動をして、地球----......じゃなかった、故郷の星を取り戻そうとしてる星守のみなさんには本当に尊敬のまなざしでしゅ!」
「だから......ボクもみなさんのようになりたいと思って、イロウスを倒してみたんでしゅ。き、記憶がなくても、その気持ちだけは、本物なんでしゅ......!」
遥香:「............」
「この話が本当だとしたら、少しこの子がかわいそうになってきたわ」
昴:「......まあ、たしかにね」
「仲間を倒すメリットもない状況だったし......。なんかこの世界の状況がわかってなさそうなのも、記憶喪失だって言われれば納得できるかも」
みき:「そうだね......」
「......ごめんなさい。あなたをイロウスだなんていって、しかも倒そうとして......」
アルル:「問題ないでしゅ! あの状況なら仕方のないことでしゅから!」
(しゅしゅ、単純な星守め! うまく騙されやがったでしゅ!)
遥香:「でも、記憶喪失だとしたら、行き場所はあるの?」
昴:「たしかに。どこかにお世話になってるのかな?」
アルル:「行き場所......」
(たしかに、そんな場所はないでしゅ)
(......まずいでしゅね。このままこの世界を探索してもいいでしゅが、あの知能指数の低そうなイロウスにまた襲われないともかぎらないでしゅし)
(なにより星守とここで別れたら......ボクの復讐計画が遠回りになりそうでしゅ)
(となると、ここは----)
「それが......ボクは記憶喪失になってから0.03秒でみなさんに出会ったでしゅ。なので......行き場所も帰る場所もないんでしゅ......」
「だから、ボクはこのまま、ここで野垂れ死んでいく運命なのかもしれないでしゅ......うっうっ、ぴえんぴえん」
遥香:「そんな......さすがに放っておけないわ」
みき:「......そうだね」
「大丈夫だよ! ひとまず、私達の拠点に一緒に帰ろう!」
昴:「それがよさそうだね。事情を話せば、先生もきっとわかってくれると思うし」
アルル:「"先生"......?」
(もしや星守を束ねていたあいつのことでしゅか?......星守の横でわいわいやんややんや言うだけの賑やかしのくせに、この世界での登場人物の座を確保しているとは、強運というかなんというかでしゅね)
昴:「まあ、とにかく一度帰ろう。お腹も減ってきたしね」
遥香:「そうね。今日も食堂でお腹いっぱい食べたいわ」
みき:「......遥香ちゃんの"お腹いっぱい"は、そうとうな気がするけど......」
「とにかく、行こうか! あなたも一緒に!」
アルル:「あ......」
「みなさん、ありがとうでしゅ~!!」
(......しゅしゅしゅ。すべていい方向に事が転がってるでしゅ)
(ボクは一度の失敗から学ぶことができる賢い生き物でしゅからね)
(復讐には準備と、頭を使うことが必要なのでしゅ)
(だからまずはこいつらの根城に潜入して、あらゆる情報をゲットするでしゅ。そして時が満ちたら----)
(こいつらを裏切り、ボクはイリス様----かどうかはわからないけど、『強大な力』とやら側について、星守をこてんぱんのふらいぱんにするでしゅ!!)
(しゅしゅしゅ、ボクにとっても星守にとっても、新たな冒険の幕開けでしゅね......!)
みき:「......なんだかこれから、何かが始まる予感がするな」
遥香:「みき?」
みき:「何が起きるのかは、わからないけど......悪いことじゃない気がするよ」
「----楽しみだね!」