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コロプラおでかけ研究所レポート#9 被災三県の消費力回復へ ~休日千円高速終了&東北被災者高速無料化~

おでかけを科学する<コロプラおでかけ研究所(主席研究員:長谷部潤)>は、株式会社コロプラ(代表取締役:馬場功淳)が運営する位置ゲープラットフォーム「コロプラ+(プラス)」における月間4,000万回もの位置登録情報を分析。今回は休日千円高速終了と東北エリア被災者高速無料化の影響を考察した。千円高速終了により土日の移動距離は1割程度縮小。特に関越道や東北道にネガティブな影響が見られた。
被災三県は移動距離の縮小は見られたものの被災者無料化施策により高速利用頻度は向上。鉄道利用による東京へのおでかけや大規模ショッピングモール利用の拡大が確認できており、消費力の回復を推察している。

※位置登録データは統計処理をしており、ユーザの皆様個人を特定できるものではありません。


東京を本拠地とするユーザの休日千円高速終了直前の土日(6/18-19)に対する終了直後の土日(6/25-26)の位置登録者数伸率。長崎・沖縄が伸び、秋田・青森・新潟が減少した。

休日千円高速終了で土日の移動距離縮む...

2009年3月28日から始まったいわゆる「休日千円高速」施策が、本年6月19日を以って終了した。終了と同時となる20日午前零時から東北地方を主とする高速道路無料措置が始まった。東日本大震災による被災証明書、罹災証明書を有している人だけが対象ではあるが、影響は大きいだろう。今回は、この大きく変わった高速料金施策について焦点を当てた。

休日千円高速がなくなったことで、週末のユーザ当たり平均移動距離は確実に縮小した。下図は、ゴールデンウィーク(GW)後の、ユーザ当たり平均移動距離であるが、平日の代表例としてあげた水曜日の変化が殆どないのに対し、土日のそれが休日千円高速適用最終週末である6月18日、19日をピークに急速に縮まっていることが分かる。水曜日と土日とのかい離も、もはや殆どないレベルにまで至った。

では、どのエリアで休日千円高速終了の影響が大きかったのであろうか。地域による違いについて見てみたい。


水曜日(平日の代表例として一つあげた)と土日とのユーザ当たり平均移動距離推移。休日千円高速終了を合図に急速に土日の移動距離が縮小傾向となったことがはっきりと表れている。

東北は影響軽微。甲信越・中国での影響大

千円高速の終了に伴う移動距離の変化は、思った以上に地域による差異となって表れた。下図は、千円高速最後の土日である6月18日、19日の平均移動距離に対する終了後最初の土日である6月25日、26日の地域別減少率である。最も落ち込みが大きかったエリアは、甲信越地方と中国地方でともに▲12%台であった。ともに東京や大阪など大都市圏に近接しており元々移動距離が長かったこと(特に中国地方は6月18日、19日のエリア別移動距離が最も長い)が主因かと思われる。また、甲信越地方のように世帯別自動車保有台数が上位(8位~10位)にあり自動車依存度が高いことも理由の一つであろう。

世帯別自動車保有台数が少なく(埼玉40位、神奈川45位、東京47位)鉄道利用の活発な南関東の影響は軽微であった。被災者・罹災者に限るとはいえ、地元の高速が無料となった東北地方も▲5%台と落ち込みは相対的に少ない部類に入った。東北エリアの高速無料化は、どちらかというと千円高速のように「遠距離を旅する」というよりは、「近距離を頻繁に」という『高速の生活道路化』を目指したものと当研究所は認識しており、距離は伸びないながら高速利用頻度は向上しているのではないか、と推察している。次ページにはエリア別の高速道路利用状況をついて考察する。


休日千円高速終了に伴い、特に甲信越地方および中国地方ユーザにおいて移動距離が大きく縮んだことが分かる。一方で鉄道利用が多い南関東、被災者高速無料となった東北エリアは相対的に小さな縮小。

土日高速利用の落ち込みは、関東より関西が大きい。東北は利用増へ

高速道路の「利用頻度」を見るためにサービスエリア(SA)における位置登録者数について調査した。下図は、幾つかピックした主要高速道路(東北、東名、名神、中国、山陽)の全SAでの位置登録者数日別合計推移を本拠地別に指数化したものである(6月6日を100としている)。終了最終土日の6月18日、19日はどのエリアも高い利用が見られたため、その前の週の土日である6月11日、12日を起点に、終了最初の週末、その翌週の週末をむすぶトレンドを薄く矢印で表した。

これもエリア別に特徴が表れた。一般に価格にセンシティブと言われている関西エリアのユーザの落ち込みがこの中では最も激しい。徐々に減少したのではなく、休日千円高速が終了した途端、位置登録者が減少したことも特徴と言えるだろう。それに比べ、関東エリアのユーザはそれほど大きな落ち込みではなく、トレンドも非常に緩やかなものとなっている。一方で東北エリアのユーザは、SAでの位置登録者数が増加トレンドとなっている。また、平日と土日のかい離が小さいのも特徴である。無料化施策により、「高速の生活道路化がきっちりと浸透した結果である」と当研究所では考えている。


6月6日(月)を100としたSAでの位置登録者数推移。被災三県がじわじわ伸ばしていることが分かる。

週末に鉄道を活発利用する被災三県...一体どこへ?

東北エリアの移動状況を分析してゆくと更に興味深い数字を得ることが出来た。それは週末の鉄道利用状況のエリア別差異である。一般に大都市圏では、通勤は鉄道を利用する。従って、駅での位置登録者数は、平日に比べ土日は大きく減少する傾向が見られる。下図は、我が国の鉄道・モノレール全駅での位置登録者数推移を本拠地別に示したものである(6月6日を100として指数化)。

驚くべきことに、奇妙なほど被災三県とそれ以外との逆相関が見られた。被災三県は週末になるとむしろ駅での位置登録者数が増える(=鉄道利用が盛んになる)のである。当初、当研究所は被災によりクルマがダメになったため鉄道利用が増えたのであろうか、と推察したが、それであれば前述した高速道路利用の増加の説明がつかない。では、被災三県の人々は、どこでどのように土日の鉄道利用をしているのであろうか。それを探るために更に深く、被災三県ユーザの路線別鉄道利用状況について調べてみた。


6月6日(月)を100とした本拠地別の鉄道駅位置登録者数推移。通常は通勤・通学が大きく減少する土日に同者数も減少するものの、被災三県では逆に大きく伸びていることが分かる。なぜ?

土日には鉄道に乗って東京へ!

実は、被災三県ユーザも、地元の路線について言えば、他エリアと同様に土日に落ち込む結果であった。それでも平均すると土日に上向くのは、何と東京において鉄道利用を活発に行っていたからなのである。例えば東北の基幹鉄道である東北本線の位置登録者数に対し実に1割以上のユーザが京浜東北線や山手線、更には成田エクスプレスを利用しているのである。被災地復旧のための買い出しや首都圏に避難した方に会いに来た方もいるだろう。一方で観光やショッピングに来た方もいると思われる。後者が相応の規模だとすると、消費パワーも戻ってきた明るい兆しと言えるだろう。


被災三県ユーザの路線別位置登録者数推移。土日は東京での鉄道利用が大きく伸びていることが分かる。

被災地の方の消費パワーも回復? 関東は千円高速終了の影響大

休日千円高速の終了は、来場者の高速道路利用を前提として立地選定された「大規模アウトレット&ショッピングモール」に大きな影響を与えたのではないかと考えられる。首都圏近郊のサンプルとして東名高速沿いの「御殿場プレミアムアウトレット(静岡県御殿場市)」、東北道沿いの「佐野プレミアムアウトレット(栃木県佐野市)」、そして外環道利用も可能ながら電車来場を促している「イオンレイクタウン(埼玉県越谷市)」の三つを取り上げた。結果は下図にあるようにやはり相応の影響が見られた。御殿場および佐野が落ちこんだのに対し、高速利用者数が相対的に少ないと思われるレイクタウンは千円高速最後の土日を上回る位置登録者数を実現している。

そして非常に興味深いことに、好調なイオンレイクタウンの位置登録者数トレンドと、被災三県ユーザの大規模ショッピングモールのそれとが、面白いほど一致したのである。被災三県ユーザに人気(=位置登録者数の多い)の大規模ショッピングモール(イオンモール名取エアリや三井アウトレットパーク仙台港など)は震災で大きな被害を受け、全面再開の時期が千円高速終了後の1~2週間後、という影響も押し上げ要因にはなっている。しかしながら、先の鉄道によるおでかけも併せて勘案すると、被災三県の人々の消費力は確実に回復してきていることが、このデータからもうかがえるであろう。


ショッピングモールでの位置登録者数推移。高速依存の高い施設は落ちている。千円高速終了の影響が小さいイオンレイクタウンと被災三県ユーザとの登録者数トレンドが一致している点が面白い。

まとめ ~鉄道の復権と被災三県の消費力回復を確認~

2年以上続いた休日千円高速の終了は、移動距離や位置登録者数の減少と言う形で、きっちりとデータとなって表れており、少なからずネガティブな影響を及ぼしたと判断している。表紙の図表に日本地図を載せたが、東京を本拠地とするユーザは、休日千円高速終了直前の土日と直後の土日とではその行き先を「より遠方の西」へと振り向けていることが見てとれる。具体的には九州・沖縄が伸び、東北・甲信越が減少した。これは以前のレポートで「このゴールデンウィーク、昨年比でどこが伸びたか?」を調べ、「西高東低」との結果を得たが、千円高速終了による人々の動きの変化も、同じく西高東低となった。

一都三県ユーザが、千円高速終了前後でどう位置登録地点に変化があったかを市町村別にランキングしてみても、上位は沖縄県那覇市や埼玉県吉川市(イオンレイクタウンは市街中心地からの判定で住所のある越谷市ではなく吉川市に分類される)、浦安市など、飛行機や鉄道利用で訪れるエリアが上位を占めた。鉄道、特に東海道新幹線の利用は大きく伸びたと推察している。静岡県湖西市新居町(東京都ユーザ+33%)、愛知県額田郡幸田町(同+25%)、静岡県田方郡函南町(神奈川県ユーザ+17%)、など東海道新幹線が通っている(東名高速からは遠く離れている)エリアの伸長が著しいためである。一方で、東名高速沿いの愛知県豊田市(上郷SA・神奈川県ユーザ▲51%)、愛知県岡崎市(美合PA・同▲33%)、静岡県浜松市北区(浜名湖SA・東京都ユーザ▲16%)、の位置登録者数は大きく減少した。

千円高速は2008年10月30日の経済対策閣僚会議で盛り込まれたものである。当然と言えば当然であるが、JR各社の株価は大きく下落した(リーマンショックの時期と重なったことも大きな要因ではあるが...)。まだまだ高速道路のETC休日割引率が大きいため一概には言えないが、休日千円高速終了による鉄道利用の伸びを見る限り、例えばJR東海の株価にもポジティブな影響を及ぼすかもしれない。

鉄道と言えば、休日に被災三県ユーザが東京に多くの方がおでかけしている点は非常にポジティブである。成田エクスプレス利用も多いことから海外利用も多いのであろう。仙台の大規模ショッピングモールも震災を乗り越え全面開業へと至り、そこへのおでかけも活発なことがうかがえる。徐々に「日常」へと戻り始めたと言えるだろう。

被災三県の消費力回復へ~休日千円高速終了&東北被災者高速無料化~(1324KB)

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コロプラおでかけ研究所について

株式会社コロプラ内に設立された「おでかけ」に関するリサーチセンター。位置情報プラットフォーム<コロプラ+>におけるユーザからの月間4,000万回にも及ぶ位置登録情報データをベースに「人々の移動」を調査・分析し定期レポートを発表している。

主席研究員:長谷部潤 ※株式会社コロプラ 取締役CSO(最高戦略責任者)を兼務

株式会社コロプラ 会社概要

社名
株式会社コロプラ
http://colopl.co.jp
所在地
東京都渋谷区恵比寿南1-15-1 JT恵比寿南ビル3F
設立
2008年10月1日
資本金
256,385,000円
代表者
代表取締役社長 馬場功淳
事業内容
「コロニーな生活☆PLUS」など位置情報ゲーム、位置情報サービスプラットフォーム「コロプラ」の開発・運営

【本プレスリリースに関するお問い合わせ先】

株式会社コロプラ 経営企画部:天野 press@colopl.co.jp

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