両者、真っ向から撃ち合った。

降り落ちる〈ロストメア〉の拳を、ラギトは突き上げた拳で撃ち返す。
魔力と魔力が激突し、激しく空気を震わせる。

リフィルが糸を操り魔法を放つ。
〈ロストメア〉が振り上げた右腕に鎖状の雷が絡みつき、じゅうじゅうと焼き焦がした。

〈ロストメア〉が悶え、リフィルの方を振り向こうとした瞬間、その顔面に立て続けに銃弾が炸裂する。

ルリアゲハが得手とする速射ファニング六連。
〈ロストメア〉が怯んだ隙に、リフィルは人形を跳躍させ、別の家の屋根へと飛び移った。

怒り狂った〈ロストメア〉が、両腕をめちゃくちゃに振り回す。
ラギトはその嵐をかいくぐり、巨体をすばやく駆け上がって頭部に取りついた。

燃える力を右拳に収束させて叩き込む。
岩盤のごとき皮膚を砕き、魔力で構成された肉体へ二の腕までズブリと埋めたところで、ラギトは魔力を炸裂させた。
〈ロストメア〉の頭部が内側から爆裂し、この世のものとは思われないほど凄惨な絶叫が上がる。

三分の一ほど抉れた頭部が、やけくそのように突き出された。
逃れられるはずもなく、ラギトは激しい衝撃を受けて吹き飛ぶ。

〈ロストメア〉が、ラギトの身長にも等しい巨大な左手を伸ばしてつかみかかる。
宙を舞うラギトには、逃れるすべがない。

そのはずなのに、左手は豪快に空を切った。

驚きのあまり、〈夢〉の口が、あんぐりと開かれる。

ラギトの姿は、その口の中にあった。

吹き飛ばされる瞬間、人外魔装から鎖を放ち、〈ロストメア〉の牙に絡みつけていた。
そして、鎖を急激に収縮させることで、自身を敵口内に引き寄せ、拳をかわした。

ラギトも初めてしたことだった。
エインの〈ロストメア〉から託された力が、人外魔装に新たな変化をもたらしたのだ。

リフィルから癒しの魔法が届く。 頭突きの衝撃でふらついていた足が、しっかりと敵の舌を踏みしめる。

咆哮とともに、ラギトは拳を突き上げた。

上顎を貫き、頭部に拳を埋め込んで、再び魔力を炸裂させる。

〈夢〉の悲鳴が轟いた。夢見る者の胸を打ち、痛ましいほどの哀れみを呼び起こさせる悲鳴が。

だが、夢を持たない〈メアレス〉に、そんな感傷は存在しない。

雷撃と銃弾の十字砲火が〈ロストメア〉の頭部に突き刺さる。

悲鳴はおどろおどろしい断末魔の叫びへと変わり、やがて、物悲しくしぼんでいった。