白い世界

  1. ――白い、白い世界だった。

    どこまでも、白が広がる世界。 音も、風も、味も、何も感じない。 ただただ、白と静寂だけの世界。

    何故、自分はここにいるのだろう。

    こんなことを、している場合ではなかった気がする。 もっと、やらなくてはならない 大事なことがあったような気がする。

    懸命に、懸命に、 成し遂げなければならない想いが、 目的が確かにあったはずで。

  2. ???

    あ……

  3. ふと、声が漏れた。

    原因は、変化だ。 白だけの世界に生まれた変化。 それに、思わず心が反応した。

    ちらちらと、白い世界に雪が降る。

    白に白が降り積もる、 それはある種、幻想的な光景だ。

    なのに、この心に差し込むのは 幻想的な情景への感慨ではなく、 痛みを覚えるほどの後悔だった。

    その、雪の情景に覚えがあった。 自分の内側に、雪と紐づけられた 強い後悔の記憶がある。

    それを手繰ろうと、指で宙を掻く。 だが、その行いに意味はない。 ちらつく雪が、指の上で溶ける。

    願いが、あったはずだった。

    想いを、託されたはずだった。

    為さねばならぬと、誓ったはずだ。

    何故、自分はここにいるのだろう?

  4. ???

    ま、だ……

  5. 何も、成し遂げていないのに。

    まだ、やるべきことがあるのに。

    まだ、果たすべき願いがあるのに。

  6. ???

    わ、たしはまだ……まだ……

  7. 雪の情景に、記憶が蘇る。 後悔の彼方に隠れてしまった、 後悔する以前の記憶が蘇る。

    白い情景の彼方に、緑の森。 温かな木漏れ日が差し込む その場所で、大切な時間があった。

  8. ???

    死ね、ない……

  9. 死ぬわけには、いかなかった。

    今、まさに、命尽きる寸前でも。 この誓いを、無にはできない。

    朽ちる肉体の、焼ける瞼の、 その奥に確かに焼きついた笑顔を 取り戻すために――

  10. ???

    死ぬわけに、いかない……

  11. 使命感を、言の葉に乗せた。

    ――瞬間、光が世界を包み込む。

    抵抗もできず、呑み込まれる。 しかし、そこに危機感は覚えない。 安堵でもなく、理解があった。

    機会が、与えられたのだと。

    この、愚かで未熟な魂に、 今一度、使命を果たす機会が――

Re:ゼロから交わる白猫生活 序章