聖なる空のエステレラ2 星に捧げる聖夜の物語
「プロローグ」

  1. ウィズ

    にゃにゃ……!?いつの間にか異界の歪みに呑まれてしまったみたいにゃ。

  2. 聖夜が近くなり人々が浮かれだす時期。つい先ほどまで、君とウィズは街の見回りをしていた。

    路地裏で怪しい光が発生したかと思ったら、瞬く間に呑みこまれてしまった。

  3. ウィズ

    それにしても、間が悪いにゃ。こんな格好をしているところを異界の人に見られたら、クエス=アリアスのことを誤解されるにゃ。

  4. ウィズ

    特にキミにゃ。さすがにその格好で見回りはふざけすぎにゃ。

  5. 返す言葉もなかった。

    ウィズが聖人の仮装をしていたからといって、自分までトナカイの仮装をする必要はなかったかもしれない。

    浮かれていたことを悔いる君は天を仰ぎ――

    満天の星に目を奪われた。

    この美しい星々。そして遠くに視線を向ければ、絢爛とした宮殿エークノームが見える。

  6. ウィズ

    にゃー! 知ってる異界でよかったにゃ!

  7. 君は安堵の息をついてから、エークノームに向かおうとするが――

  8. ウィズ

    キミ、待つにゃ。

  9. ウィズ

    エークノームには不思議な結界が張られているはずにゃ。歩いても無駄足になるから、誰か来るのを待つにゃ。

  10. そういえばそうだった。いくら歩いても一向にエークノームに近づけなかった過去を思い出す。

    手持ち無沙汰の君は周囲を見回してみるが、辺りには雪くらいしかない。

    いや、一面に広がる白いそれは、雪ではなく雲だった。

    君はふと興味を抱いて、雲をすくい取ってみる。

    ひんやりしているが、新雪以上にふわふわと柔らかな感触だった。

    童心に返った君は、雲を雪玉のように丸めて遠くへ放ってみた。雲の玉はふわりとした軌道を描いて飛んでいく。

    もうひとつ握ろうとしたが、手がかじかむのでやめた。童心は既にどこかへいってしまったようだ。

    じっとしていると、身体の芯から冷えていくような寒気に包まれる。

    無駄足でも歩いたほうがいいかもしれない。そう提案してみるが、ウィズはいい顔をしない。

  11. ウィズ

    無駄足はしてやられてる感があってイヤにゃ。四聖賢として、そういう真似はしたくないにゃ。

  12. 無駄足って言うけど、そもそもウィズは歩かないでしょ。文句を言うなら肩から降りてくれない?

    そんな悪態をつきそうになるが、思いとどまる。寒さのせいだろうか。些細なことにも苛立ってしまった。

    仕方なく震えながら立ちつくしていると――

  13. リアラ

    セイクリッド聖女雲かき!

  14. マーガレット

    サイフォン・クラウドショベリング!

  15. 宮殿へと続く階段のほうから、聞き覚えのある声が近づいてくる。

    にゃ!聞くだけで温まってくる暑苦しい声がするにゃ!

    君とウィズの前に聖女見習いリアラと恋の天使マーガレットがやってきた。

    しかしふたりは君を一瞥すると、警戒心をあらわにする。

  16. リアラ

    マーガレットさん!怪しい魔物がエークノームへの侵入を試みています!

  17. マーガレット

    きらびやかに飾り付けてるけど……あの角は凶暴さの証!

  18. リアラ

    トナカイの魔物でしょうか?調教すれば、ソリを引くのに役立つかもしれません!

  19. マーガレット

    つまり……私たちの負担が減る!

  20. マーガレットが君を見据えて弓を引き絞る。

    ちょっと待って! と君は叫ぶ。

  21. リアラ

    どうやら人の言葉を喋る魔物のようです!

  22. ウィズ

    魔物じゃないにゃ! 私たちにゃ!

  23. マーガレット

    人の言葉を喋る猫を連れている……ってあれ!?いつかの黒猫さん!?ということは……。

  24. 君はトナカイの覆面を外した。

  25. マーガレット&リアラ

    魔法使いさん!

  26. 君は驚かせてしまったことをふたりに詫びた。

  27. リアラ

    すっごくお久しぶりです。いったいどれぐらいぶりでしょう?

  28. リアラ

    あの頃はまだ聖女見習いだったリアラが、今では立派な……いえ、今でも立派な……聖女見習いです。

  29. ウィズ

    ふたりはなにしてるにゃ?雲で遊んでるのかにゃ?

  30. リアラ

    遊びじゃありません、雲かきです。雲かきは聖女見習いの仕事ですから。

  31. リアラ

    できたての雲はやわらかいですが、冷気にさらされ続けるとカチカチになっちゃうんです。やわらかいうちに雲かきしないと大変で。

  32. どうやら雲かきは、雪かきのようなものらしい。

    きれいな階段状になっている雲の道も、聖女のたゆまぬ努力のたまものなのだろう。

  33. マーガレット

    夏場はちょっとサボっても大丈夫ですけど、冬場はまずいですからね!

  34. マーガレット

    この季節、雲かきは聖女見習いの重要な仕事のひとつ……って私天使なのになぜ雲かきを!?

  35. リアラ

    ひとまず、雲かきは一旦とりやめです。魔法使いさんをエークノームにご案内します!

  36. 君はリアラとマーガレットの後に続いて、エークノームに向かった。

聖なる空のエステレラ2 星に捧げる聖夜の物語 プロローグ

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